ストレスチェック制度の義務化はいつから?準備すべき4ステップを解説!

・「従業員50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化される?
・「いつから対応が必要?」
・「具体的に何を準備すれば良いのか?」

中小企業の経営者や人事労務担当者の方にとって、近年、急速に重要度が高まっている、働く人々のメンタルヘルスケア。

これに応える形で、2025年5月に労働安全衛生法が改正・公布され、令和10年4月1日から、労働者数50人未満の事業場にも ストレスチェックが義務化されます※。

これは、小規模な事業場であっても、従業員のメンタルヘルス対策が法的義務となる大きな転換点とも言える改正です。

そこで本記事では、今回の法改正の詳細や義務化の具体的なスケジュール、小規模事業場ならではの課題と解決策を紹介。

さらに、義務化に備えて今すぐ取り組むべき「4つの準備ステップ」をわかりやすく解説します。
制度の全体像を、きちんと理解するための手引きとしてご活用ください!

関連記事➡️ストレスチェック制度は意味がない?
※厚生労働省|ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策

50人未満事業場への義務化:法改正の全体像とスケジュール

まずは、今回の法改正によって何が変わり、いつから適用されるのか、制度の全体像とスケジュールをみてみましょう。

おさえておきたいポイントについて紹介します。

これまでの制度との違い:努力義務➡️完全義務へ

ストレスチェック制度は、働く人が自身のストレス状態を知ることで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」を目的として、2015年(平成27年)12月にスタートしました※。

制度上の区分は、主に以下の通りです。

  • 従業員50人以上の事業場:実施義務あり
  • 従業員50人未満の事業場:令和10年4月1日より義務化となります

つまり、小規模な事業場においては「実施することが望ましい」という努力義務だったものの、実施しなくても法的な罰則等はありませんでした。

しかし、2025年の改正労働安全衛生法の成立によりこれが変わりました。

「当分の間」という但し書きと努力義務の規定が削除され、従業員数に関わらず、全ての事業場でストレスチェックの実施が義務化されることになります。

そのため、企業の大小に関わらず、働く人すべてのメンタルヘルスを守る体制になったと言えます。

※厚生労働省|2015年12月からストレスチェックの実施が義務になります
厚生労働省によるストレスチェック導入ガイドはコチラ!

改正法の成立と施行時期(いつから義務化される?)

では、具体的にいつから義務化がスタートするのでしょうか。
法改正の経緯と施行期限を確認してみましょう。

  • 法案の閣議決定:2025年3月14日
  • 法案の成立:2025年5月8日(衆議院本会議で可決)
  • 公布日:2025年5月14日(令和7年法律第33号)

重要なのは「施行日(実際に義務が発生する日)」ということ。

ポイント

今回の改正法の施行日は、「公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日」と規定されており※
その後、2028年(令和10年)4月1日より義務化となりました。

そのため、産業医がいない事業場での体制構築には時間がかかるため、早めの情報収集と準備が不可欠です。

※厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要

義務化の背景について

なぜ今、小規模事業場への適用拡大が必要なのでしょうか。

その背景には、企業規模による「健康格差」の解消という課題があります。

厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」※によると、メンタルヘルス対策を実施している事業所の割合は全体の63.2%となっています。

これを働く人の割合で見てみると、50人以上の事業所では94.3%と高水準であるものの、30〜49人では69.1%、10〜29人では55.3%と低くなり傾向にあるようです。

しかし、メンタルヘルス不調のリスクは企業規模に関係ありません。
むしろ、小規模な職場ほど以下のようなリスクが高い傾向にあるため、さらなる改善が急務です。

  • 人間関係が濃密で、一度関係が悪化すると逃げ場がない
  • 一人あたりの業務負担が大きく、代わりがいないプレッシャーがある
  • 社内に相談できる専門部署や担当者がいない

また、小規模事業者にとって、従業員1人の休職や離職が経営に与えるダメージは甚大です。
すべての労働者が平等にメンタルヘルスケアを受けられる環境を整備することは、労働者の健康を守るだけでなく、企業の安定経営を守るためにも大きな課題と言えるでしょう。

※厚生労働省|令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要.p4

小規模事業場が直面する課題と政府の支援策

50人未満の事業場での実施義務化にあたっては、大規模事業場とは異なる特有の課題があります。
ここでは、予想される課題と、それに対する政府の支援策、そして導入によるメリットを整理します。

50人未満の事業場が抱える課題について

小規模事業場がストレスチェックを導入しようとした際、主に以下の3つの壁に直面します。

  1. 産業医の不在
    労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に産業医の選任義務があります。逆に言えば、50人未満の事業場には選任義務がなく、産業医(医師)がいないケースが大半です。ストレスチェックの実施者(医師や保健師等)をどう確保するかが最大の課題となります。
  2. リソースの制約
    専任の人事担当者がおらず、経営者や総務担当者が他の業務と兼務していることが多いため、制度の導入・運用にかける時間や人的リソース、予算が限られるケースも。
  3. プライバシーの保護
    従業員数が少ないため、「誰が高ストレス判定だったか」「どの部署の満足度が低いか」といった情報から、個人が特定されやすいリスクがあります。従業員が不利益な扱いを恐れて正直に回答できない、といった事態を防ぐための配慮がとくに重要です。

義務化に伴う政府の支援策は?

出典:YouTube
独立行政法人:労働者健康安全機構

政府もこうした課題を認識しており、法改正にあたっては「50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する」ことを明記しています。

具体的には、以下のような支援策が講じられる予定です。

  • 小規模事業場向けマニュアルの作成
  • 地域産業保健センター(地さんぽ)の体制拡充
    産業医がいない小規模事業場のために、医師による面接指導などの産業保健サービスを無料で提供している「地域産業保健センター(地さんぽ)」※の体制が拡充されます。

参考|厚生労働省|こころの耳|地域産業保健センター(地さんぽ)

ストレスチェック導入による経営上のメリット

義務化への対応を「コストや手間の増加」とだけ捉えるのはもったいないかもしれません。
適切に運用することで、たとえば、以下のようなメリットを得られます。

  • メンタルヘルス不調の早期発見・予防
    不調を未然に防ぐことで、貴重な人材の休職・離職リスクを低減できます。
  • 職場環境の客観的な改善
    「なんとなく雰囲気が悪い」といった問題をデータ(集団分析)で可視化でき、具体的な改善策につなげやすくなります。
  • 生産性の向上
    働きやすい環境は従業員のエンゲージメントを高め、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
  • 採用力・企業イメージの向上
    「従業員の健康を大切にする会社」としての姿勢は、求職者へのアピールポイントとなり、人材確保や取引先からの信頼獲得にもつながります。

具体的なプロセスや効用については、厚生労働省が発表の「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(令和4年3月)に掲載されています。

義務化に向けた具体的な4ステップの準備と進め方

ここからは、実際に義務化へ向けて動き出すための具体的な手順を解説します。

小規模事業場が無理なく導入を進めるための「4つのステップ」を確認しましょう。

ステップ実施項目具体的な内容とポイント
Step 1基本方針の表明と社内規程の整備衛生委員会等で制度の導入を審議し、目的や実施方法、個人情報保護に関するルールを明記した「実施規程」を作成。
Step 2実施体制の構築と担当者の選任制度全体を管理する「実施代表者(経営者等)」、実務を行う「実施事務従事者(人事担当等)」、そして専門職である「実施者(医師等)」を決定。
Step 3実施方法の選定(外部委託の検討)厚労省の無料プログラムを使うか、外部のASPサービス(ストレスチェック代行業者)を利用するかを決定します。
Step 4従業員への説明と周知徹底制度の目的、「個人の結果は本人の同意なく会社には伝わらないこと」、受検による不利益取り扱いがないことを丁寧に説明し、安心感を醸成します。

これから導入をお考えの方は、厚生労働省による「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(改訂令和3年2月)をチェックすることをお勧めします。

取り組みの手順や実施方法等をしっかりと確認しておきましょう。

【重要】産業医がいない場合の実施体制と外部委託の活用

50人未満の事業場で最もハードルが高いのが 「Step 2:実施者の選定」 かもしれません。
社内に産業医や保健師がいない場合、以下の2つの選択肢が現実的だと思われます。

地域産業保健センター等の活用

地域の医師会などが運営する地域産業保健センターを利用することで、産業医がいない事業場でも医師による面接指導などの支援を受けられる場合があります。

ただし、ストレスチェックの実施そのもの(質問票の配布や回収、評価)を行ってくれるわけではありません。

地域ごとに設置されているため、事業所のある地域で相談してみてください。
たとえば、埼玉県川口市の取り組みでは、市の医師会がその役割を担っています。

※参考|川口地域産業保健センター

外部機関(ストレスチェック代行業者)への委託

多くの小規模事業場にとって、これが現実的かつ推奨される方法ではないでしょうか。
外部の専門機関(ASPサービス等)に委託すれば、「実施者」の役割(医師や保健師の提供)も含めて依頼できるケースが多くあります。

外部委託(ASP)のメリット

コストは発生しますが、担当者の業務負担とセキュリティリスクを考慮すれば、費用対効果の高い選択肢と言えます。

ストレスチェック実施後の重要な対応

出典:YouTube
厚生労働省:こころの耳

ストレスチェックは「検査をして終わり」ではありません。

実施後の対応こそが、メンタルヘルス不調を防ぐ(一次予防)ための鍵となります。

高ストレス者への医師による面接指導

ストレスチェックの結果、「高ストレス者」と判定された従業員から申し出があった場合、事業者は速やかに医師による面接指導を実施する必要があります。

  • 面接指導の実施:医師が従業員の勤務状況や心理的な負担を確認。
  • 就業上の措置:面接指導の結果、医師が必要と認めた場合、事業者は「残業の制限」「配置転換」「労働時間の短縮」などの措置を講じる必要があります。

産業医がいない場合は、前述の「地域産業保健センター(地さんぽ)」を活用するか、産業医紹介サービスなどを利用してスポットで医師を依頼する体制を整えておく必要があります。

集団分析と職場環境改善への活用

個人の結果に加え、部・課などの集団ごとにストレス状況を集計・分析することを「集団分析」といいます。

法的には「努力義務」ですが、職場環境改善のためには必須のプロセスです。

  • 分析のルール:個人の特定を防ぐため、原則として10人以上の集団で集計を行います。
  • 改善の実施:分析結果をもとに、高ストレス者が多い部署の業務量を見直したり、コミュニケーションの機会を増やしたりと、PDCAサイクルを回して改善に取り組みます。

50人未満の事業場では、「部署ごとの人数が少なく、10人以上で集計できない」という問題が起きがちです。

その場合は、複数の部署をまとめたり、全社一括で分析するなど、個人が特定されないグルーピング設定に配慮が必要です。

ストレスチェック結果の保存管理とプライバシー保護の徹底

ストレスチェックの結果は、厳密に保護されるべき「要配慮個人情報」です。

  • 第三者提供の制限:本人の同意がない限り、実施者(医師等)から会社(人事権を持つ人)へ個人の結果を提供することは禁止されています。
  • 保存期間:検査結果の記録は5年間保存する義務があります。
  • セキュリティ:データにはアクセス制限やパスワードを設定し、紙媒体の場合は鍵のかかるキャビネットで管理するなど、厳重な対策が必要です。

とくに小規模なオフィスでは、書類の置き場所やパソコン画面から情報が漏れるリスクが相対的に高くなります。

従業員が安心して受検できるよう、「結果は誰にも見られない」という信頼関係と物理的なセキュリティ環境を構築することが大前提です。

50人未満事業場に関するFAQと注意点

最後に、制度導入にあたってよくある質問と注意点をまとめました。

ストレスチェックの対象者となる従業員の範囲は?

正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象になる場合があります。
以下の2つの条件を満たす従業員は対象となります。

  1. 期間の定めのない労働契約、または 契約期間が1年以上(更新により1年以上になる場合を含む)の者
  2. 1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者

※派遣労働者については、原則として「派遣元事業者」に実施義務があります。
※会社役員(使用者としての立場にある者)や、休職中・長期育休中の従業員は実施義務の対象外です。

ストレスチェックを従業員が受検を拒否した場合、罰則はある?

事業者に実施義務はありますが、従業員に受検義務はありません(任意)。

そのため、受検を拒否した従業員に対して懲戒処分などの不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。

しかし、これまで見てきたように、制度の目的は従業員の健康を守ることです。

受検率が低いと正確な集団分析もできません。

拒否する従業員には、「会社には結果が知らされないこと」「自身の健康管理に役立つこと」を丁寧に説明し、理解を促す姿勢が大切となります。

ちなみに、義務化後に事業者がストレスチェックを実施しなかった場合の罰則は現時点では明確化されていませんが、既存の労働安全衛生法違反として、最大50万円以下の罰金が科される可能性があります※。

何より「安全配慮義務違反」として、万が一の際に民事上の損害賠償リスクが高まる点に注意が必要です。

※e-Gov法令検索|労働安全衛生法第百二十条

費用を抑える方法はある?

小規模事業場にとってコストは切実な問題です。

  • 厚労省版プログラム(無料):厚生労働省が配布している無料の実施プログラムを使用すれば、ソフト代はかかりません。ただし、サーバーへのインストールやデータの管理、実施者(医師等)の手配は自社で行う必要があります。
  • ASPサービス(有料):従業員一人あたり数百円〜程度で利用できるサービスが増えています。手間とセキュリティリスクをお金で買うと考えれば、結果的にコストパフォーマンスが良い場合も多いです。
  • 助成金:過去には実施費用に対する助成金がありましたが(令和4年度末に廃止)、現在は制度が変わっています。「団体経由産業保健活動推進助成金」など、最新の助成金情報をこまめにチェックすることをお勧めします※

※参考|独立行政法人|労働者健康安全機構|団体経由産業保健活動推進助成金

ストレスチェック制度の義務化について:まとめ

2025年の法改正により、ストレスチェック制度は全事業場へと拡大されます。

2028年(令和10年)4月1日までまだ時間はありますが、「産業医がいない」「担当者がいない」という小規模事業場こそ、早めの情報収集と体制づくりが必要です。

本記事のポイント:

  1. 完全義務化:50人未満の事業場も「努力義務」から「義務」へ変わる。
  2. スケジュール:2025年5月公布、最長で2028年5月までに施行。
  3. 外部委託の活用:産業医が不在の場合、外部ASPサービスや地域産業保健センターを活用する。
  4. プライバシー保護:従業員の安心感を確保するため、情報の取り扱いには細心の注意を払う。

ストレスチェックの導入は、単なる法令遵守(コンプライアンス)ではありません。

従業員が心身ともに健康で働ける環境を作ることは、離職を防ぎ、生産性を高め、会社の持続的な成長を支える土台となります。

ぜひこの義務化を前向きな機会と捉え、「働きがいのある職場づくり」への第一歩を踏み出してください!

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