ポリヴェーガル理論における「凍りつき」について簡単に解説!
今回はポリヴェーガル理論における「凍りつき」について紹介します。
「大事な話をしているのに、急に黙り込んでしまった」
「注意をすると、まるで魂が抜けたようにぼーっとしている」。
そんなお子さんの姿を見て、イライラしたり、不安になったりしたことがある方も意外に多いのではないでしょうか?
親御さんからすれば「無視されている」と感じるかもしれません。
とはいえ、ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)の視点で見ると、それは反抗でもサボりでもなく、お子さんの体が必死に自分を守ろうとしている「凍りつき(フリーズ)」という状態とも考えられます。
この記事では、お子さんが「貝」のようになってしまう理由と、その時にお家でできるケアについて、専門的な知識を分かりやすく解説します。
ポロヴェーガル理論って何?という方は、こちらの記事からお読みいただくと、より理解が深まります!
「凍りつき」は、命を守るための「究極の電源オフ」

私たちは危機に直面すると、まず「戦うか逃げるか」を選択する生き物です。
たとえば、ピンチの場面に直面すると心拍が上がる経験、誰にでもありますよね。
一方、お子さんにとって「親からの厳しい叱責」や「学校での耐えがたい不安」が、戦うことも逃げることもできないレベルの圧倒的なストレスになった時、第3のスイッチが入ります。
これが、自律神経の中でも最も原始的なシステムである「背側(はいそく)迷走神経系」が引き起こすシャットダウン、つまり今回解説する「凍りつき」という状態です。
この反応は、動物が天敵に捕まった際に行う「死んだふり」と同じものと言えます。
エネルギーの消費を極限まで抑え、痛みや恐怖を感じにくくすることで、衝撃から心身を保護しようとしているわけです。
「凍りつき」の状態にあるお子さんのサイン
お子さんが「凍りつき」モードに入っている時、体や心には以下のようなサインが現れます。
ぜひ、普段のお子さんの様子を思い浮かべながらチェックしてみてください。
- 見た目の変化: 顔色が悪くなる、表情が消える(お面のような顔)、視線が合わなくなる。
- 言動の変化: 声が小さくなる、あるいは全く出なくなる。頭が真っ白になって何も考えられなくなる。
- 内面の感覚: 体が鉛のように重い、自分が自分ではないようなフワフワした感覚(解離)、無気力で何も手につかない。
もしこのような状態が見られたら、それはお子さんの神経系が「今は緊急事態だ!」と判断して、ブレーカーを落としているサインかもしれません。
実際に、これを読まれているみなさんも、子供時代に経験があるのではないでしょうか。
無反応、ゆっくりした動きというのも特徴です。不安や緊張のときも力を入れて固まっていることがあります。不安や緊張で心拍数が上がっている場合は過覚醒状態にあり、覚醒レベルが上がっています。
その場合は、凍りつきとは違います。凍りつきの場合は「表情がない」「青ざめている」というイメージで、不安や緊張の場合は力が入っていて表情から読み取れることが多いです。
とは言え、見た目では微妙な違いでもありますが、身体の反応としてはだいぶ異なる点です。
なぜ「何でもない一言」で凍りついてしまうのか?

「そんなに怒鳴ったわけではないのに、どうして?」と不思議に思う親御さんも多いでしょう。
そこに関わっているのが、「ニューロセプション(本能のセンサー)」と言われるものです。
私たちの体は、じつは意識よりもずっと早いスピードで「ここは安全か? 危険か?」を常に監視しています。
過去に強いストレスを経験したり、不安な状態が長く続いたりしているお子さんは、このセンサーがとても敏感になっている状態。
そのため、親御さんのちょっとした真剣な眼差しや、低いトーンの声を、センサーが「巨大なライオンの咆哮(ほうこう)」と同じレベルの生命の危機として、誤認してしまうことが少なくありません。
「怠けている」と勘違いしてはいけない理由
「凍りつき」の重要な点は、それがお子さんの「意思」ではなく、自律神経の「反射」であるということ。
たとえばやりがちなのが、「ちゃんと考えなさい!」「何とか言いなさい!」などの問い詰めです。
しかしこれは、赤信号で止まっている車に「早く走れ!」と怒鳴るようなものです。
むしろ、さらにプレッシャーをかけることで、お子さんの神経系は「まだ危険が去っていない」と判断し、シャットダウンの状態が長引いてしまいます。
理論の提唱者であるポージェス博士は、この反応を「心が弱い」からではなく、「過酷な状況を生き延びるために体が選んだ賢い戦略」だと述べています。
赤信号から「安心(青信号)」へ戻るための接し方
お子さんが「凍りつき」から抜け出し、再びリラックスした状態(腹側迷走神経系が優位な状態)に戻るためには、「今は100%安全だよ」という信号を体に届けてあげる必要があります。
- まずは「待つ」: 言葉での説得は届かない時期です。沈黙を許容し、お子さんのペースで言葉が出てくるのをゆったりと待ちましょう。
- 感覚を取り戻す(グラウンディング): 「今、ここ」の安心感を取り戻す手助けをします。温かい飲み物を渡す、ブランケットをかける、あるいは足の裏が地面についている感覚を一緒に意識するのも効果的です。
- 親御さんの「協働調整(共同調整)」: 子どもの神経系を落ち着かせる最強のツールは、親御さんの穏やかな表情と声です。 親御さん自身が「大丈夫だよ」という波長でそばにいるだけで、お子さんのセンサーは少しずつ「安全」を感知し始めます。
ポリヴェーガル理論における「凍りつき」:まとめ
ポリヴェーガル理論を知ることで、お子さんの不可解な態度の裏にある「生き残るための戦い」が見えてくるようになります。
お子さんが黙り込んでしまった時は、どうか自分を責めたり、お子さんを責めたりしないでください。
「ああ、今は体のブレーカーが落ちて、必死に自分を守っているんだな」と気づくだけで、接し方は大きく変わるはずです。
少しずつ安全な時間を積み重ね、お子さんの「耐性の窓(ストレスを処理できる範囲)」を広げていくお手伝いをしていきましょう。
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参考一覧
東京未来大学|ストレスに向き合うための心理的・感情的安全性:ポリヴェーガル理論の視点から
こころみクリニック大門浜松町|ポリヴェーガル理論とは(Ver1.0)
(株)心理オフィスK|ポリヴェーガル理論とは
参照|千葉大学教育学部研究紀要第67巻|ポリヴェーガル理論からみた精神療法について
一般社団法人旭川てをつなぐ育成会|公認心理師に聞く!ポリヴェーガル理論とは
東京カウンセリングオフィス|トラウマと凍りつき
HugKum|HSCの子に起こりやすい「凍りつき反応」先生の叱責や給食が脅威に…不登校の子どもを理解するために大人が知っておきたいこととは?





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