要対協に守秘義務はある?メンバー構成や担当者の資格を解説!
「近所で子どもの泣き声が絶えない」
「育児に悩んでいる親がいるけれど、どこに相談すればいいのかわからない」……。
そんなとき、地域で中心となって動く組織が要保護児童対策地域協議会(以下、要対協)です。
児童虐待やネグレクトといった痛ましいニュースがたびたび聞かれる現代。
要対協は子どもたちの命を守る「最後の砦」ともいえる重要なネットワークです。
しかし、「名前は聞いたことがあるけれど、具体的に何をしているところなの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、要対協の設置目的から厳しい守秘義務、意外と知られていないメンバー構成や担当者の資格まで分かりやすく解説します。
- 要対協が対象とする児童や設置される7つの目的
- なぜ厳しい?要対協における「守秘義務」と罰則のルール
- 学校・警察・病院まで!多様なメンバー構成の裏側
- 調整担当者に必要な専門資格と具体的な業務内容
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要保護児童対策地域協議会(要対協)とは何をするところか?

とはいえ、まずは簡単に要対協について振り返ってみましょう。
要対協は、児童福祉法第25条の2に基づき※、市町村に設置される法定ネットワークのことです。
平成16年(2004年)の法改正により、虐待の芽を早期に摘み取るための「地域の子どもネットワーク」として誕生しました。
一言で言えば、「虐待や支援が必要な子どもを早期に見つけ出し、医療・教育・福祉といった異なる専門機関が連携して、地域ぐるみで適切にサポートするための会議体」と言えます。
地方公共団体は、単独で又は共同して、要保護児童(第三十一条第四項に規定する延長者及び第三十三条第十九項に規定する保護延長者を含む。次項及び第六項において同じ。)の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者その他の関係者(以下「関係機関等」という。)により構成される要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」という。)を置くように努めなければならない。
※参考|e-Gov|児童福祉法|第二十五条の二
要対協が対象とする「3つのカテゴリー」とその背景
要対協が支援の対象とするのは、深刻な被害を受けている子どもだけではありません。
問題が深刻化する前の「予防」や「継続的な見守り」を重視しており、大きく分けて以下の3つの対象をカバーしています。
| 対象 | 内容と支援のイメージ |
| 要保護児童 | 虐待を受けている、または保護者がいない、監護を放棄(ネグレクト)されているなど、生命や権利の危機にある子ども。一時保護や施設入所も視野に入れた緊急性の高い支援が中心となります。 |
| 要支援児童 | 虐待とまではいかなくとも、親の病気、経済的困窮、育児不安、知識不足などにより、適切な養育環境が保たれていない子ども。家庭訪問や家事援助など、親への直接的なサポートを通じて悪化を防ぎます。 |
| 特定妊婦 | 出産後の虐待やネグレクトの可能性が高いと見込まれる妊婦。若年妊娠や予期せぬ妊娠、生活困窮など、出産前から多機関による「伴走支援」を行い、親子が孤立するのを未然に防ぎます。 |
早期の段階から関わることで、最悪の事態を防ぐ「セーフティネット」としての役割を果たしています。
そのほか、非行児童も対象に含まれているのも大きな特徴です。
要対協を設置する「7つの目的」と連携の重要性
そもそも、なぜ市町村は要対協を作る必要があるのでしょうか。
それは、虐待や育児困難という複雑な問題は、児童福祉課などの単一の機関だけでは解決できないという点にあります。
要対協の重要な目的はおもに以下の7つです。
- 早期発見:近隣住民、学校、病院、保育所など、子どもが接するあらゆる場所からの情報を一箇所に集約し、リスクの兆候を見逃しません。
- 迅速な支援開始:情報の精査後、どの機関が主導して動くべきかを即座に判断。これにより、対応の遅れによる被害の拡大を最小限に抑えます。
- 情報の共有化:各機関が断片的に持っている情報(学校での様子、病院での怪我の履歴、家庭の経済状況など)を持ち寄り、子どもの置かれた「真の実態」を可視化。
- 役割分担の明確化:支援の現場で起こりがちな「誰かがやるだろう」という押し付け合いを防ぎ、各機関の責任とタスクを整理。
- 責任ある体制づくり:単なる「情報交換の場」で終わらせず、組織として継続的に関わり続ける責任の所在を明確化。
- 良質な支援の提供:医師、保健師、社会福祉士、教員などの専門家が知恵を絞ることで、その家庭の特性に合わせた「オーダーメイド」の支援プランを作成。
- 機関間の負担分散:一つの機関だけでは、精神的・体力的な負担が大きすぎて疲弊することも。そのため、複数の機関で支え合うことで、持続可能で質の高い支援を維持。
参考|厚生労働省|第1章 要保護児童対策地域協議会とは|要保護児童対策地域協議会の意義|をもとに作成
要対協における「守秘義務」の重要性と罰則
これまで紹介したように、要対協で共有されるのは、子どもや家庭のプライバシーに関わる非常にセンシティブな情報がメインです。
そのため、関係者が安心して率直な意見を出し合えるよう、法律によって厳格な「守秘義務」が課されています。
法律で定められた守秘義務の法的根拠
児童福祉法第25条の5により、協議会の構成員(およびその職にあった者)には「正当な理由がない限り、協議会の職務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない」という強い義務が課せられています※。
通常、医師や弁護士などは法律で個別に守秘義務を持っていますが、要対協の枠組みの中では「子どもの保護」という目的のために情報を出すことが「正当な理由」として認められるよう設計されています。
こうすることで、法的なトラブルを恐れることなく、積極的な情報提供と連携が可能です。
※参考|厚生労働省|市町村児童家庭相談援助指針について:第4章要保護児童対策地域協議会
守秘義務違反の重い罰則
守秘義務を軽視し、個人情報を不正に流出させた場合には、児童福祉法第61条の3に基づき、厳しい刑罰が科されます※。
1年以下の懲役、または50万円以下の罰金
この罰則規定は、要対協の信頼性を担保するためのものであり、個人情報の不正利用を防ぐ強力な抑止力でもあります。
また、法人格を持たない任意団体などが参加する場合でも、実務に携わるメンバー全員を個人資格で構成員に指定するなど、漏洩(ろうえい)リスクを最小限に抑える工夫がなされているのも特徴です。
※参考|厚生労働省|市町村児童家庭相談援助指針について:第4章要保護児童対策地域協議会
地域を支える!要対協の多彩なメンバー構成と役割

要対協は、特定の行政窓口だけで完結する組織ではありません。
地域に点在するあらゆる専門機関が「一つのチーム」として機能しています。
| カテゴリ | 具体的な構成メンバーと役割の例 |
| 児童福祉関係 | 市町村児童福祉課、児童相談所、保育所、民生・児童委員:支援のハブとなり、家庭訪問や子どもの見守り、必要に応じた一時保護の実施などを担います。 |
| 保健医療関係 | 小児科、産婦人科、保健所、保健師:子どもの発育状態のチェックや、親のメンタルヘルス支援、ネグレクトが疑われる場合の医学的所見の提供を行います。 |
| 教育関係 | 教育委員会、幼稚園、小・中・高等学校:毎日子どもと接する立場から、表情の変化や服装の汚れ、欠席の状況など、日々の細かな異変をキャッチします。 |
| 警察・司法関係 | 警察署、弁護士会、法務局:事件性の判断や、緊急時の子どもの立ち入り調査の同行、また法的観点からの助言や人権擁護を担当します。 |
| その他民間 | 子育て支援NPO、社会福祉協議会、里親、ボランティア:行政の手が届きにくい夜間や休日のサポート、居場所の提供など、より生活に近い場での支援を担います。 |
このように、「縦割り」を排したスクラムを組むことで、複雑に絡み合った家庭の問題に対して、逃げ場のない隙間のない支援を構築することが可能となります。
たとえば、神奈川県横浜市では、地域一体で連携しながら取り組んでいます。
参考|横浜市|要保護児童対策地域協議会とは
要対協の調整担当者の資格要件と専門的業務
要対協が円滑に回るかどうかは、各機関のハブとなる「調整担当者(実務者)」の手腕にかかっています。
要対協の調整担当者に必要な専門性と資格要件
調整担当者は、医療や教育、福祉といった異なる言語を話す専門家の間を繋ぐ役割のため、高度な専門知識が必要です。
厚生労働省の基準では、以下のいずれかの要件を満たすことが求められています。
- 児童福祉司の資格を有する者:児童相談所などで専門的な実務経験を積んだベテラン。
- 都道府県等の講習・研修を修了した者:児童福祉に関する専門的なトレーニングを積んだ職員。
実際には、社会福祉士や精神保健福祉士、保健師などの国家資格を持つ職員がこの重責を担うことが多く、法務や心理学にも通じていることが求められます。
※参考|厚生労働省|令和4年(2022年)児童福祉司等及び要保護児童対策調整機関の調整担当者の研修等の実施について」の改正について
要対協調整担当者の具体的な業務内容
調整担当者の仕事は、単なる事務作業にとどまりません。
- 事務の総括・会議運営:代表者会議や個別ケース検討会議の進行役を務め、対立する意見を整理します。
- 個別ケースの進行管理(モニタリング):決定された支援策が計画通り実行されているか、状況が悪化していないかを常にチェックします。
- 関係機関との24時間体制の連絡調整:緊急性の高い通報が入った際、直ちに関係者に連絡を取り、初動対応を指示します。
- 広域連携:家庭が他の市区町村へ引っ越す際、これまでの経緯や支援プランが途切れないよう、確実に情報を引き継ぎます。
令和6年度の要保護児童対策調整機関の調整担当者研修等についてはこちらのページをご参照ください。
相談から解決まで!要対協による支援の6ステップ

実際に支援が必要な事案が発生した際、要対協はどのようなプロセスで動くのでしょうか。
- 相談・通報受理:学校や近隣住民、あるいは189(児童相談所虐待対応ダイヤル)からの情報が事務局に集まります。
- 緊急度判定会議:寄せられた情報の信憑性と危険度を即座に判定します。「今すぐ訪問すべきか」を数時間以内に決めることもあります。
- 調査・情報収集:必要に応じて家庭訪問を行い、子どもの顔色や家庭の清潔度、親の対応などを直接確認します。
- 個別ケース検討会議(コア会議):支援に関わるメンバーが机を囲み、誰がいつ、どのような支援を行うかの「個別援助計画」を策定します。
- 支援の実行:計画に基づき、各機関が動きます。例えば、保健師が親のカウンセリングを行い、保育所が延長保育で子どもの安全を確保するといった役割分担です。
- モニタリングと評価:定期的に会議を開き、「子どもの表情が明るくなったか」「親に変化はあるか」を評価します。状況が改善すれば、支援のレベルを下げていく(終結)ことも検討します。
要対協のステップについても以下の記事で解説しています。こちらもあわせてご一読ください。
▶︎要保護児童対策地域協議会(要対協)をわかりやすく解説!目的や対象者、自治体の取り組み例は?
まとめ:要対協は地域で子どもを守る重要なチーム
要保護児童対策地域協議会(要対協)は、虐待という深刻な社会問題に対し、地域が総力を挙げて立ち向かうための中心的な仕組みです。
今回の重要ポイントをおさらいしましょう。
- 要対協は市町村に設置され、早期発見から継続支援までを一貫して行う。
- 対象は虐待を受けている子どもだけでなく、不安を抱える親や特定妊婦まで。
- 児童福祉法による厳しい守秘義務と罰則があり、専門家が安心して情報共有できる。
- 学校・警察・病院・民間団体がメンバーとなり、それぞれの専門性を発揮する。
- 専門資格を持つ「調整担当者」が、機関のハブとなって支援をコントロールする。
- 6つのステップで、緊急対応から長期的な見守りまで組織的に実行される。
- 市民の「気づき」が、この強力なネットワークを動かす最初のスイッチになる。
要対協は、けっして「親を裁く場所」ではなく、「どうすれば親子が安心して地域で暮らしていけるか」を考える場所です。
もし、周りで助けを求めているサインを感じたら、地域の児童福祉窓口や「189」へ連絡してください。
勇気ある行動が、要対協というチームを動かし、一人の子どもの人生、そして一つの家庭の未来を救うことに繋がります!
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