特別支援学級と特別支援学校の違いを解説!対象となる障害や支援、卒業後の進路は?
特別支援学級は、障害のある児童生徒が学習や生活上の困難を克服するために設置された学級です。
従来の特殊学級から名称が変更され、現在では一人ひとりの特性に応じたきめ細かな支援が行われています。
本記事では、特別支援学級の制度や仕組み、入級手続きから実際の教育内容まで、保護者の方々が知っておきたい情報を分かりやすく解説します。
また、特別支援学校についても併せて解説していますのでお子様の教育環境を検討される際の参考としてご活用ください。
なお、本ブログの別記事において、関連する内容も掲載しています。
そちらも併せてお読みいただくと、より理解が深まりますよ!
特別支援学級について

障害を抱える児童生徒を支援する支援施設には、「特別支援学級」及び「特別支援学校」があります。
しかし、名称が似ているため、混同してしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで以下では、それぞれの役割について個別に解説します。
特別支援学級の定義と目的
特別支援学級とは、小中学校に設置されている、障害を抱える児童生徒を支援するための学級です。
そのため、授業では学習面に対する支援のほか、児童生徒の障害に応じた指導を受けられるのが大きな特徴です。
また、1クラスの定員は小中学校ともに通常8人と少人数に設定されているため、児童生徒のニーズに合わせたきめ細い配慮がなされるのも特徴と言えるでしょう。
さらに、障害の程度が比較的軽い児童生徒の場合は、通常の学級に通いながら、障害に対応した支援を受けられる「通級による指導」(通級学級)も選択可能です。
参考|文部科学省|特別支援教育の現状
就学先については文部科学省|障害のある子供の就学先決定についてをご参考ください。
対応している7つの障害区分
特別支援学級の支援対象となる障害として、おもに以下の障害が挙げられます。
・知的障害
・肢体不自由
・病弱・身体虚弱
・弱視
・難聴
・言語障害
・自閉症・情緒障害
これらの障害に合わせた指導が行われ、
児童生徒の自立を後押しする支援が実施されます。
教育課程の特徴
通常学級と特別支援学級では、教育課程も大きく異なるのは言うまでもありません。
平成29年に告示の「小学校学習指導要領」の総則では、特別支援学級で実施される教育課程について次のように定義されています。
(ア)障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るため,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動を取り入れること。
(イ)児童の障害の程度や学級の実態等を考慮の上,各教科の目標や内容を下学年の教科の目標や内容に替えたり,各教科を,知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして,実態に応じた教育課程を編成すること。
引用|小学校学習指導要領(平成29年告示)総則 p108
なかでも、特別支援学級の教育課程において特に重要とされるのが「自立活動」の実施です。
自立活動とは、児童生徒の障害に応じた特別の指導であり、生活する上で克服するべき課題を解決するための、知識や技術を学ぶ重要な活動です。
また、自立活動には3つの柱(要素)が設定されています。
3つの柱とは、
1、知能・技能の習得
2、思考力・判断力・表現力を養う
3、学びに向かう力・人間力を養う
とされ、さらに、児童生徒の障害に応じた6区分27項目※に及び指導内容が設定されています。
6区分とは、
・健康の保持
・心理的安定
・人間関係の形成
・環境の把握
・身体の動き
・コミュニケーション
です。
参考|国立特別支援教育総合研究所|特別⽀援学級の教育課程(一つ前の学習指導要領で示されているものですが、全体像を理解しやすいためこちらを添付しています)
※東京都教職員研修センター|自立活動指導事例集
参考|福島県特別支援教育センター|自立活動の指導のための早見表(例示)
特別支援学校について

ここでは「特別支援学校」について解説します。
2007年(平成19年)までは「ろう学校」「盲学校」「養護学校」の3つに区分され、それぞれの障害に応じた学校がありました。
しかし、学校教育法の改正以降、現在では「特別支援学校」に統一されています。
以下にその内容を見てみましょう。
特別支援学校の制度概要
支援学級と似ていますが、こちらは、心身に障害を抱える児童生徒が通う「学校」のことです。
そのため、通級制度は実施されておらず、一人ひとりの障害に合わせた学校に通学します。
また、特別支援学校は児童生徒の学習課程に合わせるかたちで、
・幼稚部
・小学部
・中学部
・高等部
が設置されているのも特徴です。
特別支援学級と同じく、少人数制をとっており、小学部及び中学部1学級の生徒数の上限は6名。
また、高等部1学級の上限は8名までとなっています。
こちらも、障害による生活上の課題を克服し、自立を支援するための知識や技術を習得することが大きな目的です。
対象となる障害について
特別支援学校において、対象となる障害は主に以下の7つです。
各障害に対する自立活動の内容も一部紹介します。
視覚障害
白杖を使った歩行指導、視覚情報を補うための触覚 や聴覚等の活用の指導、弱視レンズ、拡大映像設備等の視覚補助具の活用の指導※1
聴覚障害
補聴器等をつけての発音指導、言語指導、手話や指 文字などの多様なコミュニケーション手段を活用する指導※2
知的障害
知的障害に随伴してみられる、極端な表出言語の遅 れや強い情緒不安定に対する指導、自己の行動のコ ントロールなど※3
肢体不自由
姿勢保持や移動、食事・排泄・衣服の着脱などの日 常生活動作、ICT 支援機器等を活用したコミュニケー ションの指導※4
病弱・身体虚弱
病気の原因や回復を図るために必要な食事や運動制 限の理解、長期入院などからくる不安状態の改善に関する指導※5
言語障害
言葉の基礎的な概念の形成に関する指導、自分で内 容をまとめながら話を聞くなどの能力を高める指導※6
自閉症・情緒障害
話を聞く態度の形成などコミュニケーションの基礎に関する指導、話し言葉を補うための機器等の活用、
手足を協調させて動かすことに関する指導※7
※参考|文部科学省|特別支援学校|幼稚部敎育要領小学部・中学部学習指導要領
参照|文部科学省|特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編
教育内容と特徴
特別支援学校における教育課程は、小中学校及び高等学校で学ぶ教科のほか、通常の学校と同じく総合的な学習も実施されています。
さらに加えて、上記の自立活動の指導が実施されるのが一般的です。
なお、知的障害の児童生徒への教育課程については、児童生徒の特性を考慮したカリキュラムが実施されます。
参考|厚生労働省|特別支援教育の概要
参考|文部科学省|特別支援学校教育要領・学習指導要領解説|総則編(幼稚部・小学部・中学部)
文部科学省|特別支援学校学習指導要領解説|総則等編(高等部)
特別支援学校卒業後の進路について

高等部を卒業後の進路についても見てみましょう。
2022年(令和4年)のデータ※によれば、同年の特別支援学校の卒業者は21,191人とされ、進学や就職など、その進路は多岐にわたります。
※文部科学省|特別支援教育の充実についてp8
卒業後の進路選択
2022年(令和4年)のデータを参考に、特別支援学校高等部の卒業生の進路を紹介します。
卒業生21,191人のうち、399人(全体の1.9%)の生徒が大学等に進学し、337人(全体の1.6%)が教育訓練機関等に進んでいます。
また、全体の30.2%に相当する6,360人が就職等の進路を決定しており、卒業後も社会での活躍が大いに期待できそうです。
そのほか、社会福祉施設等の入所並びに通所者は12,934人で(全体の61.1%)、卒業後も適切な支援を受けられるため、安心ですね。
いずれの進路にしても、障害を抱える方が、さらに活躍できる社会基盤を作ることが、今後の課題と言えるでしょう。
参考|文部科学省|特別支援教育の充実についてp8
障害者雇用制度の活用
特別支援学校修了後に就職等を選択する場合は、障がい者雇用枠からの就職を考えてみるのも良いかもしれません。
障がい者雇用枠は「障害者雇用促進法」※により定められた雇用枠です。
これにより、企業や団体は労働者全体の2.5%にあたる従業員を、障がい者雇用枠として採用することを求められています。
また、障害者雇用促進法においては
・職業紹介
・障害者職業センター、
・障害者就業・生活支援センター
といった職業リハビリテーションを推進しています。
そのため、これらを積極的に活用することで、自分の適正にあった職業が格段に探しやすくなるかもしれません。それぞれのリンクを掲載しますので、一度目を通してみるのも良いでしょう。
厚生労働省|ハローワーク
独立行政法人|高齢・障害・求職者雇用支援機構|地域障害者職業センター
厚生労働省|障害者就業・生活支援センター|令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧
障がい者雇用数は、19年連続で過去最高を更新※しており、今後もさらに進展することが予想されます。
※厚生労働省|障害者雇用促進法の概要
※厚生労働省|最近の障害者雇用対策について|障害者雇用の状況p10
障がい者雇用枠に必要なもの
障がい者雇用は増加傾向にありますが、雇用枠を利用するには障害者手帳が必要となります。
障害者手帳の種類は以下の3種類です。
・身体障害者手帳
・精神障害者保険福祉手帳
・療育手帳
各手帳により、受けられる支援が異なる場合があるため、交付を希望する際には、必ずお住まいの自治体に確認してください。
特別支援学級・特別支援学校まとめ
特別支援学級・学校は、障害のある児童生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出すための教育の場です。
そのため、どちらも少人数制や専門的な支援体制により、個々の課題に丁寧に向き合える環境が整えられています。進路選択については、本人の希望や適性を考慮しながら、保護者と学校が密接に連携して決定していきます。
共生社会の実現に向けて、特別支援教育の重要性は今後さらに高まっていくことでしょう。
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