セルフ・キャリアドックとは?その背景や目的、メリットは?企業の導入事例も簡単に解説!
この記事では、近年広がりを見せるセルフ・キャリアドックについて紹介します。
終身雇用という従来の雇用のあり方が変化し、
これからは従業員一人ひとりが、みずからキャリアを選択する時代になりつつあります。
とはいえ、突然「新しいキャリア形成を」と言われても、
多くのが困惑してしまうのも事実です。
そんな中に登場したのが、2016年の「改正職業能力開発促進法」において施行された、
セルフ・キャリアドックという試みです。
そこで今回は、その内容や目的を述べつつ、
企業の導入実績を踏まえながら解説したいと思います。
また、キャリア形成についてはコチラ(従業員支援プログラム)の記事も併せてご一読ください。
セルフ・キャリアドックについて

これからのビジネス・パーソンにとって大きな役割を果たすことが予想される、
キャリア・セルフドック。以下では、その概要や背景、目的やメリットについて、
網羅的に紹介します。
キャリア・セルフドックとは?
テクノロジーの進歩が著しい昨今、
従来のビジネスモデルやキャリア形成は変化を余儀なくされています。
とりわけ、IT技術の進展は国内のみならず、グローバルな視点においても競争が激化しているのが現状です。
そのため、これまでのような「一つのキャリアだけに従事する」という働き方では、
世界情勢に遅れをとるといった事態が懸念されています。
そこで近年登場したのが、
キャリア・セルフドックという試みです。
キャリア・セルフドックとは、企業が従業員に対してキャリアコンサルティングやさまざまな研修を行い、従業員の持てる力を引き出しつつ、自律的なキャリア形成を促すようサポートする取り組みのことを言います。
従来のような「指示待ち姿勢」の働き方を脱却し、
「従業員みずからが主体的に」企業へ関わりを持つというイメージが近いかもしれません。
また、厚生労働省もセルフ・キャリアドックの導入を推奨しており、
今後は日本全体に広がることが予想されます※
※厚生労働省|SELF CAREER DOCK「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開
セルフ・キャリアドックの背景や目的は?
では、こうした試みの背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
セルフ・キャリアドックが推奨される理由は、大きく以下の3つが挙げられます。
人口減少(おもに生産年齢)
理由の1つ目として、急速な人口減少(生産年齢減少)が挙げられます※。
女性の社会進出や外国人労働者が増える一方、
企業の人材不足は今もなお大きな社会問題です。
こうした問題を踏まえ、企業は新たに外部から人材を補うのではなく、
社内人材のキャリアを重視するようになり、セルフ・キャリアドックが注目を集めるようになりました。
また、従業員のキャリアを充実させることで、
社内における一人ひとりの選択肢を充実させ、離職率の低下も期待できます。
限られた人材の中で「いかに事業やコンテンツを充実させるか」という問題が、
セルフ・キャリアドックが生まれるきっかけともいえます。
※厚生労働省|将来推計人口(令和5年推計)の概要
改正職業能力開発促進法の施行
冒頭でお伝えしたように、
セルフ・キャリアドックは「改正職業能力開発促進法」の施行により、これまで以上に注目を集めるようになりました。
本法律は、各企業が従業員に対して、キャリア・コンサルティングや能力開発の支援を実施し、従業員の能動的な取り組みをサポートすることが努力義務として明示されています。
「ただでさえ通常業務が忙しい上に、さらにキャリア形成?」
という不満もあるかもしれませんが、こうした問題をクリアする上でも、
法律上の制定は不可欠であると考えられます。
定年の引き上げ
超高齢社会及び少子化問題を抱える日本では、
近年、定年制の廃止や年齢の引き上げが議論となっています。
「死ぬまで働けというのか!」という声が上がる一方で、
2025年4月1日から、企業は希望者全員に対して65歳まで雇用を確保することが義務づけられるようになります※。
※OBC360°|「定年65歳」は義務?高年齢者雇用安定法など2025年の改正内容と必要な対策を解説
こうしたことから、年齢を重ねても働けるようなキャリア形成が必須となり、
これまで以上に、中長期的な視点で労働者をサポートする必要に迫られています。
労働者の高齢化も、セルフ・キャリアドックが登場した大きな背景と言えるでしょう。
人材の定着や組織の活性化
セルフ・キャリアドックの目的や実施方法は、職種や業態によってそれぞれ異なります。
しかし、大まかな目的は共通しており、主に2つのがことが挙げられます。
一つは、上述したように、人材の確保(離職率の低下)や企業や組織の活性化です。
現在、人手不足の影響により適切な人材の確保が大きな課題となっています。
しかし、企業が従業員のキャリア形成や社会復帰を後押しすることで、
離職率が低下し、ワーク・ライフ・バランスの充実も図ることが期待されます。
もう一つは、従業員のキャリア意識の向上と、仕事に対するモチベーションを充実させ、継続的な成長を促すことにあるでしょう。
セルフ・キャリアドックのメリットは?

では、セルフ・キャリアドックの具体的なメリットはどの点にあるのでしょうか。
以下では、企業側と従業員側それぞれのメリットについて紹介します。
企業側のメリット①、人材の定着
企業側の大きなメリットとしては、人材の定着が挙げられます。
人材の流出は、企業にとってはかなりの痛手。
というのも、新たな人材の確保にはかなりの時間的・金銭的コストが強いられるからです。
であれば、企業が積極的にキャリア形成のための支援を行い、
従業員に生き生きと働いてもらい、組織を活性化させるほうがはるかにメリットがあります。
また、そうした企業体制では、育児や介護求職者の職場復帰率の向上も見込めるため、
企業にとって人材確保に面で大きなメリットとなると考えられます。
企業側のメリット②、生産性の向上につながる
これまでの従業員は、基本的には上司あるいは先輩の指示で仕事をするのが一般てきでした。
もちろん、現在でもこの状況は続いています。
しかし、セルフ・キャリアドックの導入により従業員のキャリア形成意識が高まることで、
「どんな自分になりたいか」「どんな仕事をしてみたいか」がさらに明確になることが期待されます。
それにより、生産性が向上し、今まで以上にクリエイティビティが発揮され、
仕事に対するモチベーションも生まれることでしょう。
従業員のメリット①、自己成長できる
セルフ・キャリアドックでは、企業からの支援が受けられるため、
同僚や同じ目標を持つ他部署の仲間たちともキャリアを磨くことができます。
個人でスキルアップすることも、もちろん可能ですが、
グループで行うことでモチベーションが継続され、
多様な意見を聞くことも期待できるでしょう。
また、情報共有が密に行われれば部署間での連携も強くなり、
仕事の効率や生産性の向上にもつながることが予想されます。
従業員のメリット②、キャリアの充実
当然ながら、キャリアの充実にもつながります。
自分にとって何が必要か、あるいは、今後どのようなプロジェクトや企画に参加したいかを想像することで、
必要なキャリアが明確になるでしょう。
セルフ・キャリアドックでは、
そのために必要なキャリア形成をサポートするため、
自分の将来像にあったキャリアを身につけることができるかもしれません。
セルフ・キャリアドックの企業導入実績

最後に、厚生労働省が公表している「セルフ・キャリアドック|普及拡大加速事業|好事例集」※を参考に、
セルフ・キャリアドックを導入している企業を紹介します。
全体については下にリンクを貼りますので、
関心のある方はそちらも併せてご覧ください。
株式会社ジオネクスト
株式会社ジオネクストでは、セルフ・キャリアドックの一環として、
・ガイダンスセミナーの実施
・キャリアコンサルティング面談の実施
・面談を通じて把握した社員の様子のフィードバック
などを実施しています。
対象は20代〜40代から各4〜5名で、
生産性の向上と、企業体質の改善を目的に行いました。
実施した結果、従業員からは
・「参加してよかった」
・「全社員に対して行ってほしい」
といった声が上がっています。
株式会社グランバー東京ラスク
若手社員や中途社員が定着せず、離職してしまうことを問題視した同社。
「キャリアの道筋が見えない」ことや「社員への期待が浸透していない」と考え、
セルフ・キャリアドックを実施したそうです。
21名の従業員に対してガイダンスセミナー及びキャリアコンサルティングを実施し、
管理職がおもな対象者となりました。
ガイダンスセミナーでは、
人事から会社のメッセージとして「従業員のキャリアを考える」ことや「支援を強化する」旨を伝えたところ、社員からは「今やるべきことがわかった」などポジティブな意見が出ています。
※厚生労働省|セルフ・キャリアドック|普及拡大加速事業|好事例集
セルフ・キャリアドックまとめ
今回はセルフ・キャリアドックについて紹介しました。
以前に比べて転職もしやすく、別の会社でキャリアを積むことも珍いことではなくなりました。
しかし、今後は1つの企業でさまざまなキャリアを積むことが、
一般的になる時代が来るかもしれません。
そのため、ご自分が「どうありたいか」「どんなことで活躍したいか」を、
より明確にすることが、生き生きと働くための重要なポイントになるのではないでしょうか。
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