大学教育無償化とは?条件や対象は?メリットや注意点をわかりやすく解説!
大学教育無償化は、2020年4月より新たに始まった奨学金制度です。
これから大学や専門学校に進学する予定の方なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
大学教育の無償化制度は、
「進学を望んでいるけど、事情により学費を払えるか心配・・・」
「家のために就職しなくてはならないけど、ほんとは専門的な知識を身につけたい」
など、本来は進学を望んでいるにも関わらず、経済的な事情で断念せざるを得ない生徒を救済する制度です。
一方で「聞いたことがあるけど、イマイチ制度についてわからない」や、「どれくらいの支援が受けられるのだろうか」など、疑問に思われている方もいるはず。
2023年12月7日には、3人以上の子どもがいる世帯について2025年度から大学の授業料等を無償化する方向で政府が動いているとの報道がありました。これについては詳細を待ちたいところです。
そこで本記事では、現行(2023年時点)の、大学教育の無償化を受ける条件や注意点について、わかりやすく解説します。
大学教育の無償化とは

ここでは制度についての概要を紹介します。
条件や対象者など、一定の規程がありますので、ここでしっかりと確認してみましょう。
新しい制度としてスタート
大学教育無償化の制度は、2020年4月から施行された新しい救済制度です。
「無償化」と一般的に表記されていますが、正式名称は「高等教育の修学支援新制度」といいます。
大学や短期大学、専門学校への進学を希望する生徒を対象に、低所得者世帯であっても、社会で活躍できる人材を育成する目的で開始されました。
一般的な奨学金制度では将来的に返済の義務が課せられますが、この制度では、原則として返済の必要はありません(例外は後述します)。
一方で「無償化」と聞くと「すべてが無料になる」と捉えられてしまいがちですが、実際は、家庭の経済状況や住む場所等によって支給金額が異なるため、注意が必要です。
授業料や入学金の減額・免除である
大学や短期大学、専門学校では高等学校とは異なりまとまった金額が必要になります。
また場合によっては、親元を離れて通わなくてはならないケースも少なくありません。
そのため、経済面で不安を抱える生徒さんは、この制度を用いることで、授業料や入学金の免除・減額が可能となります。
しかしこの制度を用いたからといってすべてが無料になるわけではないので、条件や要項をしっかりと確認しましょう。
この制度の特徴は大きく分けて以下の2点です。
1、授業料や入学金の免除または減免(授業料等免限)
2、給付型奨学金の支給※
※給付金型奨学金は、日本学生支援機構から毎月支給されます
減免金額は、希望する学校の種類や世帯年収により異なり、
1、満額支給
2、満額の3分の2
3、満額の3分の1
の3つのパターンが整えられています。
大学教育無償化の条件や対象は?
この支援制度は誰でもが受けられるものではなく、一定の条件を満たした生徒さんに適応されます。
具体的には以下の2点が条件です。
1、世帯収入や資産の要件を満たしていること※1
2、進学先で学ぶ意欲がある学生であること※2
※1・2参考:文部科学省|学びたい気持ちを応援します|高校生の皆さんへ
支援が適応されるおおよその世帯年収目安は、次の金額に設定されています。
1、世帯年収が270万円未満の家庭(満額支給)
2、270万〜300万円未満の家庭(満額の3分の2)
3、300万〜380万円未満の家庭(満額の3分の1)
また親の資産にも条件が設定されており、片方の親だけの場合は1250万円未満、共働きの場合は2000万円未満と定められています。
さらに、この制度を採用していない学校もあるため、利用の際には進学先が支援対象校であるかの確認が必要です。2021年9月の段階で大学・短大の98%、高等専門学校は100%、専門学科校は74%採用しています。
文部科学省から支援の対象となる一覧が発表されていますので、以下のリンク↓から確認してみてください。
参考:文部科学省|支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧
支給額の例(上限)
支給額の例として、国公立(昼間)と私立(昼間)の支給額を見てみましょう。
金額は支給される上限です。
<国公立> 入学金 授業料
・大学・・・約28万 約54万
・短大・・・約17万 約39万
・高専・・・約8万 約23万
・専門・・・役7万 約17万
<私立> 入学金 授業料
・大学・・・約26万 約70万
・短大・・・約25万 約62万
・高専・・・約13万 約70万
・専門・・・約16万 約59万
その他、夜間種や通信過程にも制度が適応されています。
以下のリンクから詳細が確認できます。
文部科学省|高校生の皆さんへ|学びたい気持ちを応援します|支援の金額
給付型奨学金の金額については、通学方法により金額が変ります。
そのため、地元を離れた学校に進学予定の方は、日本学生支援機構が提供している「進学シュミレーター」でおおよその金額を調べておくと良いでしょう。
日本学生支援機構|進学資金シュミレーター
↑こちらのリンクからチェックできます。
令和7年度から無償化が拡充(*2024/11/4追記)
2025年(令和7年度)から、多子世帯の学生等に対する大学等の授業料・入学金の無償化等が拡充することが決定されました。
多子世帯の学生が対象で、所得制限なく大学等の授業料・入学金を国が定める一定額まで無償となります。
多子世帯とは子供が3人以上の世帯とし、申し込み手続きは2025年(令和7年度)に各学校にて行なってください。
減額金額は授業料70万円に加え、入学金26万円。
つまり4年制大学の場合(私立)、年間授業料70万円✖️4年➕入学金26万円が減額対象となります。
なお、この施策は国の要件を満たした大学・短大・高専・専門学校がのみが対象です。
そのため、進学する大学等が要件を満たしているか、必ず確認しましょう!!!
また、多子世帯であっても第一子が扶養を外れた場合(経済的に自立した場合)も対象外となります。
こちらも併せて留意してください。
詳しくはこちらから👇
参考|文部科学省|令和7年度からの多子世帯の大学等の授業料等減免について(概要)
文部科学省|令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ
👆よくある質問集です。こちらもお読みください。
大学教育無償化のメリットや注意点は?

ここまで、大学教育無償化についてお伝えしてきました。
次に、この制度を利用するメリットと問題点について解説します。
メリット1、就学機会の確保
大学教育無償化の大きなメリットの1つとして、就学機会の確保が挙げられます。
例えば、金銭的(あるいは家庭的)理由により進学を諦めなくてはならない生徒でも、この制度を利用することで進学が可能となり、より高水準の教育を受けることが期待できます。
メリット2、就職先の選択肢が広がる
世帯収入が低い家庭の場合、どうしても子供への負担が大きくなる傾向にあります。
そのため、高等学校卒業と同時に就職する必要に迫られ、本来持っている学習意欲を満たせなくなることも少なくありません。
しかし高等教育を受けることでより深い専門知識を得られれば、就職先の選択肢が広がり、収入の安定にも繋がることが期待できます。
注意点1、条件をしっかりチェックする
大学教育無償化が国の制度である以上、募集要件をきっちりと守る必要があります。
上述した世帯収入の制限のほか、以下の条件をチェックしましょう。
1、日本国籍、法定特別永住者、永住者等又は永住の意思が認められる定住者であること
2、高等学校を卒業してから2年間までに大学等に入学を認められ、進学したものであって、過去において本制度の支援措置を受けたことがないこと。
また、高等学校での成績を提出する場合は評定平均3.5以上が必要となります。
そのため、経済的な理由だけで申請できるものではないということにも注意しましょう。
勉強に対する姿勢や意欲も重要です。
注意点2、申請が通っても打ち切られるケースがある
条件が整い申請が通ったとしても、学習条件の未達成などで打ち切られるケースもあります。具体的には以下の4点の場合に打ち切りとなります。
1、退学・定額処分を受けた場合
2、修業年限で卒業ができないことが確定した場合
3、習得単位数が標準の5割以下の場合
4、出席率が5割以下など学習意欲が著しく低いと大学等が判断した場合
また、以下の場合でも打ち切りの対象となるようです。
1、修得単位数が標準の6割以下の場合
2、GPA(平均成績)等が下位4分の1の場合
3、出席率が8割以下など学習意欲が低いと大学等が判断した場合
支援を受けられたとしても、必ずしも全額が支給されるとは限りません。
現実的には、アルバイトが必要なケースも出てくるでしょう。
そのため、勉強面・生活面の双方において自制心とバランスが求められます。
大学教育無償化以外の支援も視野に入れてみる
大学教育無償化制度は、金銭面で困窮に陥った生徒(あるいはご両親)にとって、ぜひ活用すべき制度と言えるでしょう。
しかし繰り返し述べているように、この制度は誰でもが受けられるものではありません。
場合によっては、条件が合わず審査に落ちてしまうケースも考えられます。
そのため、奨学金支援センターへの相談や、各都道府県に設置されている支援事業への相談も視野に入れてみてください。
独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)では相談窓口で相談を受け付けています→相談窓口センター
また各都道府県の支援事業一覧から、支援の確認も可能です。
→文部科学省|高校生等への修業支援|公立高等学校における就学支援金の問い合わせ先
大学教育無償化のまとめ
大学教育無償化について、目的や条件、注意点などを解説しました。
いくつか条件があるものの、より高い高等教育を受けるためには、ぜひ活用したい制度だと思います。
これから大学等いろいろな進路がありますが、支援を必要としている方は、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
このブログでは学校教育や制度など、教育現場におけるさまざまな問題を取り上げています。
これから徐々に増えていく予定ですので、ぜひ次回もお楽しみに!
前回の「GIGAスクール構想」に関心がある方はこちらからお読みください!
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