児童心理司とは?仕事内容や必要資格、やりがいや将来性、今後の課題をわかりやすく解説します!

2025-04-29

児童心理司は、子どもたちの心の健康と福祉を支える重要な役割を担う専門職です。

本記事では、児童心理司の仕事内容、必要な資格、将来性について詳しく解説します。
子どもの心理に関心がある方、この職業に興味をお持ちの方の参考になれば幸いです。

なお、本ブログでは教育心理や学校臨床について、さまざまなトピックを取り上げています。

こちらの記事もあわせてお読みいただくと、より理解が深まりますよ!
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児童心理司について

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心理職を希望する方の中には、児童心理司を視野に入れている方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、

・仕事内容
・必要資格
・やりがい

などについて迷われている方もいらっしゃることでしょう。
以下では、児童心理司がどのようなものか包括的に紹介します。

児童心理司とは?

児童心理司は、子どもや親の悩みに対して、心理学的側面から援助を行う専門職です。
以前は「心理判定員」と呼ばれていましたが、2005年の厚生労働省の通達により、児童相談所で働く心理判定員に限定で「児童心理司」という呼称に変更されました。

児童福祉法第12条により、児童相談所に勤務している心理学の専門職員を指します。
主に、子どもやその保護者の心理診断を行い、必要な支援やカウンセリングを提供するのが役割です。

近年、児童虐待や子どもの心の問題が社会的に注目される中、児童心理司の役割はますます重要になっています。

2023年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数は22万5000件を超え※、過去最多を更新しました。
このような状況下で、児童心理司は子どもたちの心の健康を守る重要な役割を担っていると言えるでしょう。

※参照|こども家庭庁|令和5年度児童虐待相談対応件数(令和7年3月現在)(PDF/831KB)

仕事内容

児童心理司の主な仕事内容として、例えば以下のものが挙げられます。

1. 心理診断: 面接:心理検査、観察などを通じて、子どもや保護者の心理状態を評価します。
         例えば、知能検査やパーソナリティ検査を用いて、子どもの認知特性や情緒面の特徴を把握します。

2. カウンセリング: 子ども、保護者、関係者に対して心理療法やカウンセリングを行います。
         トラウマを抱えた子どもに対するプレイセラピーや、保護者へのペアレントトレーニングなど。

3. 助言・指導: 心理診断の結果に基づいて、適切な助言や指導を行います。
       例えば、教育現場での適切な対応方法を先生に助言したり、家庭での関わり方を保護者に指導するのも重要な役割です

4. 援助計画の策定: 個別または集団での支援計画を立案します。
         子どもの特性や環境を考慮し、長期的な視点で成長を支援する計画を作成します。

5. 直接的な支援: レクリエーションやクラブ活動などを通じて、対象児童に直接的な支援を提供することもあります。
        例えば、ソーシャルスキルトレーニングのグループワークを実施など。

また、児童心理司が対応する主な相談内容には次のものも挙げられます。

– 養護相談:親の病気や経済的理由で養育が困難な場合の相談
– 虐待相談:身体的虐待、心理的虐待、ネグレクトなどの相談
– 育成相談:不登校、いじめ、非行などの相談
– 保健相談:発達の遅れや障害に関する相談

 必要な資格と教育背景

児童心理司になるためには、特定の国家資格は必要ありません。
しかし、以下の条件を満たす必要があるので注意が必要です(こうした条件を満たした上で、当該の職務につくことで名乗ることのできる資格を「任用資格」と呼びます)。

1. 学歴: 大学で心理学科またはこれに相当する課程を修めて卒業していること。心理学の基礎理論から臨床心理学、発達心理学、教育心理学など、幅広い知識が求められます。

2. 公務員試験: 地方公務員上級(大卒レベル)試験に合格すること。試験区分は心理職、行政職、福祉職など、自治体によって異なります。

また、近年では、より専門的な知識を身につけるため、大学院で臨床心理学や発達心理学を学んでから公務員試験を受験する人も多いようです。

児童福祉司との違いは?

児童心理司と児童福祉司は、どちらも児童相談所で働く専門職ですが、その役割には違いがあります。その違いを見てみましょう。

児童心理司の役割

・ 心理学の専門家として子どもや保護者に接し、支援を行う

・ 心理検査などを用いて知的能力の水準やパーソナリティ特性など心理的要因を調べる

・ 言語発達障害、自閉症、知的障害などのケースを担当

・ 心理学的アプローチが強調された支援を行う

など。

児童福祉司の役割

・福祉に関する相談、調査、支援・指導を行う

・社会的診断と呼ばれる対象者の社会的状況(学校との関係、親戚との関係など)を調べる

・言語発達障害、自閉症、知的障害などのケースを担当 | 肢体不自由児、重度心身障害などのケースを担当

・ソーシャルワーカーの分野での業務を担当

など。

例えば、虐待ケースに対応する場合、子どもの心理的影響を評価し、トラウマケアを行うのが児童心理司の担当です。

一方、児童福祉司は家庭環境の調査や関係機関との連携、法的対応の検討などを担当します。
この両者が協力して、包括的に支援を行なっています。

将来性について

児童心理司のやりがいって?

働く人により、やりがいは大きくことなりますが、児童心理司の仕事には、以下の点においてやりがいを実感できるかもしれません。

1. 子どものケアの成功: 子どものケアがうまくいき、心の傷が少しずつ癒えていく様子を見られたときなど。
例えば、虐待を受けた子どもが再び笑顔を取り戻す瞬間に立ち会えることもあるでしょう。

2. 家庭問題の解決: 家庭の問題がうまく解決でき、再びの虐待を防ぐことができたとき。
家族関係の改善に貢献し、子どもが安心して過ごせる環境を整えることができます。

3. 関係機関との協力: 子どもをめぐる関係機関が、問題解決に向けて一丸となれたとき。
学校、医療機関、警察など、様々な機関と連携して総合的な支援を行うことができます。

4. 子どもの成長: 長期的な支援を通じて、子どもの成長を見守り、その過程に関わることができます。

5. 社会貢献: 困難な状況にある子どもたちや家族を支援することで、社会に貢献できる実感が得られる。
次世代を担う子どもたちの健やかな成長を支えることは、社会全体の未来につながります。

ただし、児童心理司の仕事には他の職業と同様に困難も伴います。
深刻な虐待ケースや複雑な家庭問題に直面することも多く、時には支援者側にも心理的な負担を感じることもあるかもしれません。

そのため、自身のメンタルヘルスケアや、同僚やスーパーバイザーとの情報共有が重要です。

年収と待遇

児童心理司の年収は、心理系の仕事の中では比較的高い水準にあります。
ただし、採用形態によって差がありますので、ご自身が目標としているキャリアをしっかりと見極めることが重要です。

収入のおおまかな目安

1. 正規職員(地方公務員): 地方上級心理職として公務員採用された場合、安定した収入が見込めます。
初任給は大卒で月額約20万円程度。経験を積むにつれて昇給していきます。

2. 臨時職員: 正規職員よりも採用のハードルは低いですが、その分報酬も低めに設定されているようです。
月額15~18万円程度が一般的のようです。

具体的な年収は自治体や経験年数によって異なりますが、一般的な地方公務員の給与体系に準じます。
例えば、経験10年程度の正規職員の場合、年収は400~500万円程度になることが多いようです。

また、公務員としての福利厚生も充実しています。
有給休暇、育児休業、各種手当(住居手当、扶養手当など)が整備されており、ワークライフバランスも比較的保ちやすい環境が整っていると言えるでしょう。

ただし、児童相談所などでは緊急対応や時間外勤務が必要になるケースもあります。
そのため、柔軟な働き方が求められる場合も視野にいれておいてください。

児童心理司に将来性はある?

児童心理司の需要は今後さらに高まると予想されており、
概ね以下の要因が挙げられます。

1. 増員計画: 厚生労働省の「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(2022年)では、2026年度までに現状よりも約950人程度増員し、3,300人程度とする目標が掲げられました。

2. 社会的ニーズの増加: 児童虐待や子どもの心の問題に対する社会的関心の高まりに伴い、児童心理司の役割がますます重要になっています。

特に、2019年の児童福祉法改正により、児童相談所の体制強化が義務付けられ、専門職の需要が高まっているのが現状です。2024(令和6年)年には、児童相談所運営指針も全国的に改定されました。

3. 専門性の評価: 心理学的アプローチの重要性が認識され、児童相談所などでの児童心理司の専門性が高く評価されています。心理学の専門知識を持つ児童心理司の専門性がますます高く評価されている中、心理学の専門知識を持つ人材の需要は今後も高まるでしょう。

4. 職域の拡大: 児童相談所以外の施設でも、心理専門職の需要が増加しており、活躍の場が広がっています。
学校現場でのスクールカウンセラーや、医療機関での心理職など、子どもの心理支援に関わる職域がその例です。

5. 新たな課題への対応: 近年、SNSによるいじめやヤングケアラーの問題など、新たな社会課題が注目されています。それにより、児童心理司の役割は重要性が増しており、これらに対応するためも継続的な学習と専門性の向上が求められるでしょう。

児童心理司の今後の課題について

1. 人材不足: 増員計画が進められていますが、2023年の時点で全国のおよそ8割の自治体が国の定めた基準に達していないのが現状です。そのため、質の高い人材の確保と育成が急がれています。

2. メンタルヘルスケア: 児童心理司の仕事は精神的な負担が大きいことも課題の一つです。
そのため、二次的トラウマリスクを避けるためにも、児童心理司自身のメンタルヘルスケアの充実や、スーパービジョン体制の整備が重要です。

3. 専門性の向上: 社会の変化に伴い、新たな知識やスキルの習得が常に求められます。
例えば、発達障害に関する最新の研究知見や、トラウマケアの新しい手法など、継続的な学習が必要です。

4. 他職種との連携: 児童福祉司、医療従事者、教育関係者など、多職種での効果的な連携が求められます。
それぞれの専門性を活かしつつ、チームとして支援を行う能力が重要になっています。

5. テクノロジーの活用: AI技術やオンラインカウンセリングなど、新しいテクノロジーの活用が進んでいます。
そのため、これらを効果的に取り入れつつ、対面での支援の質を維持することが課題です。

児童心理司についてまとめ

児童心理司は、子どもたちの心の健康と福祉を支える重要な専門職です。
心理学の知識を活かして子どもや保護者を支援し、社会に大きく貢献する役割を担っています。

そのため、子どもの心理に興味がある方、福祉の分野で専門性を活かしたい方にとって、児童心理司は魅力的なキャリアの選択肢となるはずです。

ぜひ、この記事を参考に、自分の適性や興味と照らし合わせて、
キャリアプランを考えてみてはいかがでしょうか。

最新記事一覧

参考ウェブサイト一覧

・厚生労働省|令和4年度における児童福祉司・児童心理司の配置状況について
・こども家庭庁|支援局 虐待防止対策課|今後の制度改正に関する検討状況について等p2~4
・厚生労働省|「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を決定しました
・就職先についての情報(2024.9月現在)
 👉jobtag|児童相談所相談員

・厚生労働省|児童相談所関係資料
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング|児童心理司の役割と育成について考える手引き(令和6年3月)
 👉児童心理司の現状や具体例など知りたい場合に有効
・こども家庭庁|関連サービスの相談窓口
👉現在、何らかのお悩みを抱えている方は、積極的に利用してください。

・独立行政法人|福祉医療機構|児童心理司
・独立行政法人|福祉医療機構|児童心理司(小中学生版)

・厚生労働省|児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号)の概要
・こども家庭庁|児童相談所運営指針の全部改正について(令和6年改正)
👉児童相談所の体制強化について。