性別不合をわかりやすく解説!相談やアプローチにはどんなものがある?

2024-09-09

多様性が尊重される現代社会において、大きな注目を集める「性別不合」

LGBTQという概念が徐々に広がりつつあるなか、
関心のある方も多いのではないでしょうか。

その一方「性別不合」という言葉を聞いても、
あまりピンとこない方が多数であるのも現状です。

かつては「性同一性障害」と定義されてましたが、
時代の流れや多様性の高まりにより、現在では異なる理解が進みつつあります。

そこで本記事では、現在における定義や、
周囲のサポート体制、さらには相談やアプローチについてわかりやすく解説します。

性別不合とは

LGBT

近年、LGBTQやトランス・ジェンダーといった、
「性自認」に関わる言葉を耳にする機会が多くなりました。

これは多様性を尊重する社会的風潮が広がったことと、
「個性を理解する」という意識の高まりによるものと言えるでしょう。

「性別不合」もそうした社会的変化の1つに数えられます。
この言葉を初めて聞いた方も多いと思いますが、
「性同一性障害」という言葉であれば、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

じつは性別不合とは、性同一性障害に対する解釈の変化により誕生した言葉です。

性同一性障害は世界保健機構(WHO)のICD(国際疾病分類)およびアメリカ精神医学会(APA)のDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)という、主要な診断の手引きで使われてきた用語です。

いずれにおいても、身体的性別と性自認の不一致を「性同一性障害」として「精神疾患」に位置付けていました。

しかし、2013年には、DSMの第5版(DSM-5)では「性別違和」に名称変更し、「障害」という言葉を使用することをやめました。

2022年には、ICDの第11版(ICD-11)では「性別不合」という名称に変更しています。同時にWHOは、それまでの「精神疾患」という扱いを改め「性の健康に関連する状態」に位置づけを変えました

いずれにせよ、生まれながらの身体的性別と自身の性自認に対する不一致は、現在では病気ではないということですね。

しかし、精神疾患という認識は是正されたものの、
依然として生まれ持った身体的性別と自分ジェンダー(男女問わず)の開きが持続的な違和感をもたらすことに変わりはありません。

そのため、本人はもちろんのこと、
社会の理解、そして周囲のサポートが今後も重要となっていきます。

トランス・ジェンダーとの違いは?

トランス・ジェンダーも生物学的性別と性自認の不一致を指しますが、
「性別不合と何が違うの?」と思われる方もいることでしょう。

結論としては、
ほぼ同じ概念ではありますが、トランス・ジェンダーは「性別不合」や「性別違和」を包括する概念と捉えると良いかもしれません。

また現在では、トランス・ジェンダーの方が医療的支援を受けるためにも、
「性別不合」や「性別違和」という概念が使用されています。

日本では「性同一性障害」という言葉が使われている

性別不合に対する解釈は大きく変わったものの、
日本においては、現在も「性同一性障害」という言葉が使用されています。

この大きな理由が、
「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(性同一性障害者特例法)によるものです※。

というのも、日本で性別変更の審議を実施する際の前提条件として、
申請者が「性同一性障害」であることが必須となっています。

そのため、現在でも「性同一性障害」という言葉が使用され続けており、
今後は時代背景に順応した対応が求められるでしょう。

※衆議院|性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

さらなる多様性の尊重と理解が重要

「性別不合」「性別違和」について、徐々に社会的な認知度が高まりつつあるとはいえ、
いまだ十分な理解が得られていないのが現状です。

欧米では法律的観点や医学的観点から、さまざまな政策が打ち出されています。
例えばアメリカでは、州ごとに法律が異なるため、
性転換手術を受けなくても性別を変更できる州もあれば、
手術が必須な州など、さまざまな解釈があるようです。

またヨーロッパでは、手術を義務付けることについて「人権侵害である」として、
手術を必要としない国が増加しています。

日本においても、2023年、最高裁において、
性別変更の手術要件めぐり特例法の規定は憲法違反であるとの判決が示されました。

さらに、2023年(令和5)年6月23日より、
「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法)」が公布・施行されています※。

そのため、今後ますます使用される言葉や取り扱い方が変化していくことが予想されます。

※内閣府|性的指向・ジェンダーアイデンティティ理解増進|性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(全文)

「性別不合」「性別違和」の発生過程は?

花


ここまで、概念的に「性別不合」「性別違和」について紹介しました。
以下では、身体的な変化について見てみましょう。
ある調査によれば、多くの方が小学校入学以前に違和感を感じているようです。

性別不合・性別違和を抱く時期は?

「性別不合」及び「性別違和」を抱くのは何歳くらいからなのでしょうか。

違和感を自覚した時期を調べた研究※によれば、
全体の56.6%が小学校入学以前であることがもっとも多く、
実に半数以前にまで上ります。

また、トランス男性においても、その70.0%が小学校入学以前に自認していたという結果となりました。

全体として、男女合わせた約80%の児童が、
小学校入学以前から小学校高学年までに、
自分の性別に対する違和感を覚えているという結果が報告されています※。

※yoi|「トランスジェンダー」と「性別違和・性別不合」はどう違う?【増田美加のドクタートーク Vol.73】

年齢段階別の変化について

性別不合・性別違和の多くは中学入学までに自覚があるようですが、
性別違和の発症については、現在は以下の2つに分けられています※。

早発生性別違和・・・小児期から発症し、青年期から成人気まで続く。中断することもあり。

晩発生性別違和・・・思春期前後、あるいはそれ以降に発症。症状の程度に個人差がある

※参考:ハートクリニック|こころのはなし

子どものケースでは、第2次性徴(思春期)が始まり、
生まれながらの身体的性別や、社会的に指定された性別に対する違和感から強まる傾向にあるようです。

また、生まれ育った文化や環境にも大きな影響を受けます。

周囲の受け止めや相談・アプローチについて

ハグ

「性別不合」「性別違和」については、周囲の理解や相談、
そして悩みを抱えている人への医学的・心理的アプローチが欠かせません。

そこで以下では、周囲の人がカミングアウトされたときに大切なことや、
本人が相談できる窓口、アプローチについて見てみましょう。

「性別不合」に対する周囲の受け止め

自分の性別不合について、周囲に伝えずに生活している人もまだまだ多いことでしょう。
その中で、彼ら/彼女らは日々大きな葛藤を抱えて生活しています。

では、周囲にいる人々はどのようにそれを受け止めればよいのでしょうか。

日常のさまざまな場面で悩みを抱えている

自分のことをオープンにできる人ならば問題ありませんが、
性別不合の多くの方は、日々葛藤を抱えて生活しています。

たとえば、以下場面で躊躇してしまうことが多いようです。

・学校(とくに小中学校、制服の選択)
・職場(同僚・上司の理解不足)
・服装(自分が本当に選びたいものが選べない)
・公共の場所(トイレの使用等)
・婚姻の問題
など(一例です)

もちろん「本人が伝えてくれなければわからない」ケースがほとんどですが、
日常生活においてこうした不便があることを知っておくだけでも、
理解に一歩近づきます。

また、なんとなく周囲が気がついていたとしても、
「本人から話を持ち出さない限り」無理に聞き出さないことも重要です。

あるいは、突然相手からカミングアウトされるケースもあることでしょう。
その際でも相手を否定せず、話をきちんと受け止めることも大切です。

相談窓口・カウンセリングについて

現在では、多くのクリニックにおいて性別不合や性別違和の相談・カウンセリングが行われています。

自分のことをなかなか周囲に打ち明けられない方は、
医療機関や心理カウンセラーなどに相談するのもよいでしょう。
相談内容や流れなどについて、各機関のウェブサイトで確認できます。

一方、医療機関やカウンセリング・ルームに行けない方もいるかもしれません。
そのような場合は、各都道府県の相談窓口や、民間の相談窓口に連絡してみてください。

たとえば、東京都ではTokyo LGBT相談 専門電話相談※を実施していますし、
大阪府では大阪府人権窓口※を設置し対応しています。

※東京都|Tokyo LGBT相談 専門電話相談
※大阪府|大阪府人権相談窓口

そのほか、厚生労働省の補助金事業による相談窓口よりそいホットライン※もあります。
よりそいホットラインでは、人権問題のほかに、暮らしの悩みたDV、暴力など多方面の相談も可能です。

よりそいホットライン

性別不合のまとめ

今回は性別違和を含めた「性別不合」について紹介しました。
日本でも、多様性を認める風潮が広がりつつあり、
偏見や差別も徐々に少なくなっている印象があります。

とはいえ、当事者の方々の多くが現在も葛藤や悩みを抱えている現状は無視できません。
この記事では表面的な部分を紹介したに過ぎませんが、
読者の皆様にとって、小さな理解の一歩となることを願っています。

参考:一般社団法人|日本小児心身医学会|性別違和
   SDGsCONNECT|LGBTの人が抱えている悩みとは?-お悩み例や相談先も網羅


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