飲酒ガイドラインをわかりやすく解説!背景やこれまでとの違いは?ストロング缶は危険?

2024-09-09

この記事では、新たに厚生労働省により設定された、
飲酒ガイドラインについて解説します。

適度に飲めばストレス発散になるアルコール。
しかし日常的に飲み続けることで、
将来重大な病気につながる恐ろしいものでもあります。

近年は若者のアルコール離れが進んでいますが、
一方で、アルコール性肝疾患による死亡者数は年々増加傾向にるようです。

こうした事態を受け、厚生労働省は、
2024年2月に新たな飲酒ガイドラインを発表しました。
そこで本記事では、その概要や背景、これまでの違いについて簡単に紹介します。

新しい飲酒ガイドラインについて

ストップ

これまでの基準は「飲酒量」が一定の基準でしたが、
2024年からは「純アルコール量(グラム)」に変更となりました。
これについては、まだご存じない方も多いかもしれません。

これまでとの違い

以前の飲酒ガイドラインは「節度のある適切な飲酒」を指導してきました。
たとえば、ビールなら〇〇杯、ワインなら〇〇などがそれです。

しかしこれまでの基準では、過去に飲酒していた人なども含まれているなど、
さまざまなバイアスがあったため、明確な基準を示すことは困難でした。

そこで厚生労働省が2024年2月19日に公表したのが、
「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」です。
今回発表されたガイドラインでは、純アルコール量に重点が置かれており、
より「病気と飲酒量の関連性」が明記されています※。

純アルコール量とは、ビールやワイン、ウイスキー、焼酎などのアルコール飲料に含まれる「アルコール量のみ」のことです。

また、
・生活習慣病
・肝疾患
・アルコール依存症
・高血圧
・食道がん
・脳卒中
など、アルコールによってリスクが高まる疾病が具体化されたのも大きな違いです。

※厚生労働省|健康に配慮した飲酒に関するガイドラインp6

飲酒ガイドラインの背景

今回公表されたガイドラインの背景には、
「アルコール健康障害対策基本法」(2013年)があります※。

その目的は、アルコールによる健康障害、飲酒運転、暴力、虐待等を防ぐことであり、
これまで以上に広く国民に周知することも目的の1つです。

近年は若者のアルコール離れを耳にする一方、
アルコール性肝疾患による死者数は年々増加傾向にあります。

その数は1996年には2,403人から2019年には5,480人に増加し、
飲酒人口が相対的に減少しているにも関わらず、健康被害が増加していることが判明しました※。

※厚生労働省|アルコール健康障害対策推進基本計画|令和3年3月p2

こうした事態を反映し、
可能な限りリスクを減少させるための目標値として、
新たなガイドラインの公表となりました。

純アルコール量を確認しよう

では、純アルコール量とはどのように定義されているのでしょうか。
以下の計算式で純アルコール量を求められます。

「飲むお酒の量」✖️「アルコール濃度(度数)✖️「アルコール比重(0.8)」

たとえば、アルコール度数5%の缶酎ハイを500ml飲む場合を見てみましょう。

この場合の計算式は、
「飲むお酒の量(500ml)✖️アルコール度数5%(0.05)✖️アルコール比重(0.8)」
となり、純アルコール量は20gとなります。

日本酒の場合だと、
「1合(180ml)✖️アルコール度数15%(0.15)✖️アルコール比重(0.8)」
21.6gという計算です。

「これくらい大丈夫かな?」
と思われる方も多いと思いますが、
この量を毎日飲み続けるだけで、大腸がんのリスクが高まります。

また現在、生活習慣病のリスクを高める純アルコール摂取量は、

男性:40g以上/女性:20g以上(1日あたり)

とされており、いずれも健康に配慮した適切な飲酒が大切です。

ストロング缶は危険?!

ビール


では、近年流行しているアルコール度数8〜9%「ストロング缶」はどうなのでしょうか。

これを読まれている読者の方の中にも、ストロング缶好きな方もいるかもしれません。

しかし新しいガイドラインを鑑みると、健康上のリスクが高いことが伺えます。

ストロング缶は危険?純アルコール量は?

コンビニやスーパーなどで目にすることの多い、
ストロング系酎ハイ(ストロング缶とも)。

これらは一般にアルコール度数8〜9%のものが多く、
それでいて値段も手頃なことから、愛飲されている方も多いのではないでしょうか。

ところが、純アルコール量の観点からすると、十分な注意が必要です。

たとえば、アルコール度数9%のストロング缶500mlを飲んだ場合を計算してみましょう。

計算式は上述の通り、
「500ml✖️アルコール度数(0.09%)✖️アルコール比重(0.8)」となり、
純アルコール量はなんと36gとなります。

500ml缶1本のストロング缶を飲んだ場合、男性の1日上限のおよそ2倍弱、
女性は上限のおよそ3.5倍の純アルコール量を摂取することになります。

これを2本、3本と毎日飲み続けたらどうなるでしょうか・・・。
当然、肝機能障害やガン、生活習慣病のリスクが急激に高まることは、
誰でも想像できます。

現在のところ、ストロング缶による肝臓へのダメージについて、
詳しい研究結果は出ていないようですが、
依存症など、心身への大きな影響がある可能性が指摘されています※。

※時事メディカル|ストロング系チューハイに注意飲みやすさの先にある危険(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 松本俊彦部長)

飲酒ガイドラインによる「飲酒の仕方」

新たな飲酒ガイドラインを受けて、
国民からは「少なすぎる」や「飲み放題コースの規制が起きるのでは?」といった懸念が出ています。

今回のガイドラインを見れば、
たとえ少量であってもガンなどの発生リスクが高まることが指摘されました。

しかし、だからと言って「飲酒を禁止する」というわけではありません。
飲み方や習慣を見直して、病気のリスクを回避することが目的です。

そのため「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、
適切な飲酒の志方5つが提示されています※。

お酒の適切な飲み方①、飲酒状況等を把握する

日頃の飲酒量や、それに伴うリスク管理が重要です。
問題行動を起こしてしまう場合は、医師やカウンセラーに相談するなど、
早期に適切な対応を。

 その②、量を決めて飲酒する

晩酌を楽しむ場合や外食など、飲酒の機会はさまざまです。
しかし、その度に過度な飲酒をしていては、ご自身だけでなく周囲にも迷惑がかかることも。

そのため、飲む量をあらかじめ決めておくと、飲酒行動や行動抑制の改善につながります。

その③、食事と一緒に飲む

食事と一緒に飲酒するようにしましょう。
食事を摂取することで血中アルコール濃度が上がりにくくなります。
これにより、お酒に酔いにくくなり、適切な判断ができるうちに1日の飲酒を終了できる可能性が高まります。

その④、合間に水を飲む

飲酒の合間に、水を飲むのも大切です。
水を飲むことでアルコールがゆっくりと分解され、
酔いにくくなります。

また、水割りなど、アルコールを薄めて少しずつ飲む習慣を身につけましょう。

その⑤、休肝日を作る

1週間のうち、最低でも2日は休肝日を作りましょう。
毎日の飲酒習慣は、たとえ少量であったとしても依存症のリスクを高めます。

※厚生労働省|健康に配慮した飲酒に関するガイドラインp5

飲酒ガイドラインまとめ

今回は「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」をもとに、
適切な飲酒量や飲み方について解説しました。

ついつい飲みすぎてしまう方は、上記以外にも以下のリスクがあることを覚えておいてください。
いずれも命に関わる病気です。

・急性アルコール中毒
・肝臓病
・膵臓病
・循環器疾患
・うつ病、自死
・生活習慣病(高血圧、脂質異常症、高血糖など)
・各種のがん

これらのすべてが、必ずしもアルコールによるものとは言えませんが、
多量飲酒は、確実に上記のリスクを高めます
そのため、ガイドラインにある通り「ご自身にとって適切な量を保ちながら」
お酒を楽しんでください。

アルコール依存症になると、「体に良くないとわかっているのにやめられない」「やめさせようとすると暴力をふるう」といったことにつながりやすく、家族を巻き込んで精神的・身体的にも参ってしまうことに・・・。

このブログでは、学校臨床や支援、教育制度などさまざまな問題をわかりやすく解説しています。

依存症関連としてはコチラ(SNS依存)や、
コチラ(スマホ依存)なども併せてご一読いただくと、より理解が深まります。


以下その他の参考WEBサイト

・公益社団法人|アルコール健康医学協会
・e-ヘルスネット|アルコールによる健康障害
・e-ヘルスネット|アルコールと肝臓病
・広報資料|みんなに知ってほしい飲酒のこと