就学相談で気を付けることとは?判定基準や申込期限、メリットについて簡単に解説!
この記事では子どもの就学相談について解説します。
就学相談は、全国の各自治体で実施されていますが、いざ申し込みを希望しても、
手続き方法や申込期限などで迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そのような方のために、
本記事では就学相談について網羅的に解説しています。
またそれぞれの項目には、関連するリンクも併せて添付しますので、
ご利用をお考えの方は、参考として自治体ウェブサイトも覗いてみてください。
就学相談について知ろう!

日本では、お子さま本人及び保護者のニーズに合わせたさまざまな教育支援制度が設けられています。
今回紹介する就学相談もその1つです。
お子さま本人の発達段階や状況を踏まえつつ、安心できる選択をご家族で考えましょう。
就学相談とは?
「そもそも就学相談って何?」という方もいらっしゃるかもしれません。
就学相談とは、なんらかの障害や発達特性(ADHDやLDなど)を抱えるお子さんが、
小学校あるいは中学校に進学するにあたり、適切な教育環境を決定するまでの相談や判断を行う場です。
相談では本人と保護者の状況や意見を踏まえた上で、
教育者、医師、心理学といった専門家の意見を参考にしながら就学先を決定します。
相談を受けるかどうかは任意であるものの、
たとえば特別支援学校や特別支援学級へ就学を希望する際には、
就学支援委員会の承認が必要です。
参考:文部科学省|就学相談・就学先決定の在り方について
自治体ごとに就学支援員会がある
「お子さんにとって、どの支援施設に就学するのが適切か」については、
最終的に各自治体の就学支援委員会が決定します。
しかし現在では「(本人・保護者から)進学を希望する学校に入学できない」という批判が増えており、
今後、この在り方は変わるかもしれません。
就学支援委員会のメンバーは教育関係者、保育関係者、医師、心理士などで構成されており、
専門的な知見から検討・助言を行なっています。
検討結果は、
・地域の学校の通常の学級
・地域の学校の特別支援学級
・都道府県立の特別支援学校
のいずれかから保護者に伝えられます。
就学支援委員会報告については、各自治体のウェブサイトにアップされているケースが多いので、
一度は目を通してみると良いでしょう。
今回は例として、埼玉県さいたま市の就学支援委員会を紹介します。
さいたま市|さいたま市就学支援委員会
判定基準は?
保護者の方にとっては、どのような「判定基準」で決定されるのか重要だと思います。
これは結論から言うと「自治体ごとに異なる」というのが答えです。
しかし一般的な基準として、下記のことを念頭に置くと良いでしょう。
・知能検査(IQテスト)
・保護者からのヒアリング
・発達検査の実施
・医師による診断
・体験授業での様子を観察
・記憶力の診断や作業状況を観察
また、就学相談における知能・発達検査にかかる時間はおおむね1時間程度とされています。
障害の定義については以下の文部科学省のサイトが有益です。
参考:文部科学省|特別支援教育について|
特別支援学校、特別支援学級では次のような障害のあるお子さんを支援しています(一例です)。
・視覚/聴覚/知的障害
・肢体不自由
・病弱・身体虚弱
・言語障害
・自閉症
・情緒障害
・学習障害
・注意欠陥多動性障害
など
なお,文部科学省で使用している用語は精神医学診断(DSM-5-TR)の用語と異なっています。
たとえば、自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害は、
DSM-5-TRではそれぞれ、
・自閉スペクトラム症
・限局性学習症
・注意欠如・多動症
という表現になっています(細かい定義も異なります)
就学相談時期や申し込み期間は?
相談時期や申し込み方法についても見ておきましょう。
こちらも判定基準と同じく自治体ごとに異なりますが、
多くは小学校入学の1年前(幼稚園の年長)の4月から9月にかけて「就学相談説明会」が実施され、
11月頃に進学先が決定する流れとなっています。
たとえば、上記で紹介したさいたま市の場合は、
就学前年の3月から電話申し込みで受け付けているようです※。
なお相談料は無料です
※さいたま市|特別支援教育相談センター
そのほか、東京都新宿区では自治体ウェブサイトから受け付けています※。
※東京都新宿区|令和6年度特別な支援を必要とするお子さんの就学相談・転学相談
説明会の案内は、幼稚園・保育園から案内があるケースや、
学校から案内所が届くケースなどさまざまです。
そのため、就学相談をお考えの保護者の方は、
お住まいの自治体ウェブサイトを必ずチェックしてください。
支援の流れ
上述の通り、大まかな枠組みはどの自治体も似ているものの、
詳細については自治体ごとに違いがあります。
同じく支援の流れも自治体ごとに異りますが、
一般的な流れとしては、以下のようなイメージをしておくと良いでしょう。
就学相談申込
👇
面談(1時間程度)
👇
各種検査や医師・心理士など専門家による診断
👇
実際に見学・体験
👇
就学支援委員会で審議
👇
面談
👇
審査通知
面談や診断の結果により、本人・保護者の希望と支援委員会の意見が合意できない可能性もあります。
また、入学しても「支援学校に馴染めない」というケースもあります。
その場合は支援先の変更も可能※ですので、お子さんのSOSを逃さないように、
しっかりと見守ってあげてください。
しかし,「○○でうまく行かなかったから、次の場所へ」ということはできるだけ避けられたほうがお子さんにとっては良いでしょう。
このような形での支援先の変更は、お子さんにも保護者の方にとっても失敗体験・傷つき経験になり得ます。
変更する場合には「前の支援先ではこういうところができるようになった。次の支援先だとこういうところがもっとよく学べる」というように、支援先の変更を前向きにとらえて進めていきたいところです。
※文部科学省|障害のある子供の教育支援の手引 ~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた 学びの充実に向けて~|令和3年6月p7
就学相談で気をつけるべきことやメリットは?

さまざまなニーズに対応する就学相談ですが、
大切なお子さんを預けるにあたり、保護者が気を付けるべきこともあります。
もちろん、以下に紹介するものが全てではありませんが、念頭においておくと、
実際の相談でもスムーズに意見や考えを伝えられるでしょう。
就学相談で気を付けるべきこと1、希望しない支援を勧められる場合がある
就学相談を受けるにあたり、後悔する場合として考えられるのが「希望しない支援を勧められる」ケースです。
「自分の子どもがなんとなく周囲の子どもと違うな」と思い相談してみたら、
実際に障害あるいは発達特性を抱えていた、という場合もあるかもしれません。
そのため、相談結果にショックを受ける保護者の方もおられます。
最初は結果を冷静に受け止められないかもしれませんし、不安になるのも当然です。
しかし、大切なお子さまのために事実としっかりと向き合い、
周囲や専門家に相談するなど、少しずつ前進するよう前向きに捉えてみてください。
その2、定員オーバーの可能性もある
支援の中には、普通授業と併用して、一部別の授業を受ける通級指導教室(通級)があります。
すべての学校に通級が設置されているわけではありませんが、通級では、
・自校通級
・他校通級
・巡回指導
といった幅広い支援が受けられます。
そのため、自治体によっては応募が殺到し、定員オーバーする場合もあるようです。
非常に残念なことではありますが、必ずしも望む支援が受けられるとは限らないということを覚えておいてください。
その3、望む支援をしっかりと共有する
就学相談は就学先を相談するだけではなく、支援のあり方を相談する場でもあります。
相談するにあたっては、しっかりと現状や教育方針、
お子さんの状態や特性を家族間で共有しておくことが重要です。
たとえば、お父さんとお母さんで教育方針が割れてしまっていては、
お子さんにとって適切な支援方針を決めるのが困難になります。
そういったことが極力ないように、お子さまと保護者の方の意見をしっかりと確認し、
きちんと希望や意見を相談時に伝えられるようにしておいてください。
就学相談のメリット①、適切なアセスメント※が受けられる
就学相談では、教育や保育や医師、心理士による身体的・心理的アセスメントが実施されます。
そのため、お子さんがどのような障害や発達特性を抱えているかが、理解できるはずです。
きちんとした診断がされれば、保護者の方も安心しますし、
お子さんとの適切な接し方も明るいものになることでしょう。
どのお子さんにも得意・不得意はあるものです。
できないことにフォーカスせず、できること・楽しんでいることを温かい心で見守ってあげてください。
※アセスメント・・・「評価」を意味します。
メリット②、支援の多様性がわかる
自分ではしっかり調べたつもりでも、
実際に相談を受けると、支援の種類や実施内容など、自分では気づかなかった別の視点があるものです。
そのため、就学相談をすることで、より良い選択肢が広がることが期待されます。
もし保護者の方が望む支援だったとしても、お子さんの実態と合っていない場合、学習効果が小さくなってしまいます。
あるいは相談する中で、新たな疑問や不安が出ることもあるかもしれません。
その場合でも遠慮なく相談し、お子さまにとって「何がベストなのか」を最優先に考えてあげてください。
就学相談まとめ
今回は就学相談について紹介しました。
さまざまな支援が実施されているものの、
どれがお子さんにとって適切なのかわからない保護者の方も多いのではないでしょうか。
そんな時には、迷わず就学相談を利用し、お子さんの適正を早めに見極めることが重要です。
このブログでは、学校臨床を中心に教育支援や制度、施策など幅広いジャンルを紹介しています。
教育支援についてはこちら(高校無償化)の記事や、
こちら(適応指導教室)の記事もお読みいただくと、より一層理解が深まります。
最近のコメント