VLP(バーチャル・ラーニング・プラットフォーム)を簡単に解説!その背景や目的、実施状況やメリット・デメリットは?メタバース登校も可能に!
この記事では、東京都がメタバース教育の一環として実施している、
VLP(バーチャル・ラーニング・プラットフォーム)について解説します。
VLPは2023年度から始まった新しい試みなため、
まだまだ聴き慣れない方も多いのではないでしょうか※。
これまでの学校教育といえば、直接学校で授業を受けるのが主流でした。
しかし、テクノロジーの進化やさまざなニーズの高まりとともに、
教育現場の在り方も徐々に変わりつつあります。
とくに近年、教育のバーチャル化が急ピッチに進み、
オンライン授業を実施する自治体が増えてきているようです。
そこで本記事では、東京都がメタバース教育の一環として新たに取り組む、
VLPを紹介します。この施策が広がることで、
最近注目のメタバース登校の認知度が格段に広がるはずです。
すでに知っている方はもちろん、
初めて耳にした方にとっても新たな知見としてご活用ください。
メタバース教育の概要についてはコチラの記事で紹介しています。
※東京都|令和5年度「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」の展開
新たな仮想空間を活用した児童・生徒支援を開始します
VLPについて解説

新たな教育施策として登場したVLPとは、どういった取り組みなのでしょうか?
以下では、VLPの大枠についてと、その背景や目的について紹介します。
不登校のお子さまを抱える親御さんや、学校に行きたくても行けないお子さまにとって、
VLPの活用は社会復帰への大きなきっかけになるかもしれません。
東京都が実施するメタバース教育
「そもそもVLPって何?」という方が大多数だと思います。
実際、小中学生のお子様を持つ親御さんでも、初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。
VLPとは「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」の頭文字の略称で、
東京都が実施するメタバース教育の通称です。
近年、全国的にGIGAスクール構想やNEXTGIGAスクール構想が実装され、
教育の在り方も大きく変化しています。
これにより、不登校や学校に行きたくても行けない生徒も、
メタバース空間で授業に参加できるようになり、児童・生徒支援の範囲が大幅に拡大しました。
VLPでも同様に、パソコンやタブレットを通じて生徒がアバターを作成・操作し、
メタバース空間内で授業を受けたり、他の生徒さんとコミュニケーションを取ったりするなど、
多様な活用施策がとられています。
GIGAスクール構想についてはコチラ
NEXTGIGAについてはコチラ
その背景や目的は?
こうした取り組みの背景や目的はどのような点にあるのでしょうか。
結論から述べると、そのもっとも大きな要因は不登校児童・生徒の増加にあります。
東京都が発表した「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等、生徒指導上の諸課題に関する調査について(令和5年発表p.18)」※によれば、令和4年度の東京都の長期欠席児童・生徒数は2万6,912人であると報告されました。
長期欠席の原因には、病気や経済的理由、新型コロナウイルスの感染回避などさまざまあるものの、
不登校の児童・生徒数は増加傾向にあることは間違いありません。
また、東京都が抱える重要な課題に「外国人の増加」が挙げられます。
外国人移住者の増加に伴い、日本語指導が必要な児童・生徒も必然的に増加しています。
令和4年度における日本語指導が必要な児童・生徒数は4,377人の登り、
そうした外国籍の児童・生徒への教育補助の役割としてもVLPが道入された背景と言えるでしょう。
いずれにしても「誰一人取りこぼすことのない」教育の実現がVLP導入の最大の目的です。
※東京都|「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等 生徒指導上の諸課題に関する調査」について
VLPの実施状況は?(メタバース登校)
では東京都におけるVLPの実施状況はどこまで進んでいるのでしょうか。
都内在住の方でもVLPを初めて聞いた方も多いと思いますが、
じつはこの動きは、2022年度より新宿区の協力のもとに始められています。
続いて墨田区、渋谷区、中野区、杉並区、八王子市、狛江市、多摩市が参加を表明し、
2023年9月から本格的な運用が開始されました。
さらに2024年(令和6年度)からは、校内別室指導推進事業の一環として、
以下の自治体が参加しています。
千代田区、台東区、江東区、品川区、大田区、豊島区、北区、荒川区、足立区、江戸川区、
立川市、府中市、小金井市、小平市、国分寺市、国立市、武蔵村山市、羽村市、あきる野市。
現在では、都内のおよそ半数近い自治体に広がっており、
今後さらに運用が拡大していくことは間違いありません。
たとえば、八王子市の例を見てみましょう。
八王子市では、平成29年度に500人程度だった小中学生の不登校生徒数が、
令和3年には約1,500人と、およそ3倍に増加しました。
この事態を重く受け止めた八王子市は、
メタバース教育を活用した「つながるプラン」※を打ち出し、
VLPを積極的に取り入れています。
※八王子市|つながるプラン(p9)
VLPの特徴について
次にVLPの特徴を簡単に紹介します。
基本的にはメタバース教育を利用した運営方針と同じですが、
ここで改めて見てみましょう。
特徴1、アバターを使ったコミュニケーション
VLPではメタバース空間内に、自分の分身(アバター)を用いてコミュニケーションができます。
アバターは自由に作成でき、他のアバターと文章による会話やボイスチャット、
感情を伝えるスタンプなどで意思疎通が可能です。
特徴2、授業だけではない
通常の学校では授業のほか、音楽や体育といった活動もあります。
VLP内で体育の授業は難しいかもしれませんが、
美術や文章など、クリエイティブな作品発表の機会が設けられているのが特徴です。
自分で描いた画像(絵画)や文章などをPDF添付で手軽に公開できるため、
周囲の目を気にしすぎてしまうお子さんも、あまり評価を気にせず発表の機会を得られます。
特徴3、グループでも交流が可能
学校での共同生活が苦手なお子さんも多いことでしょう。
しかしVLPのメタバース空間内であれば、自分一人でアバターを操作するため、
他の生徒ともコミュニケーションが取りやすく、
グループワークやグループセッションも気楽にできます。
「人前に出るのが極度に苦手」という児童・生徒にとって、
VLPは自分を表現できる機会を提供します。
VLPのメリット・デメリットは?

次にメリット・デメリットについて見てみましょう。
両方を知ることで、メタバース教育やVLPへの理解が深まります。
VLPのメリット1、バーチャルでも友達や先生と交流できるメタバース登校が可能!
VLPは単なるコミュニケーションツールではなく、あくまでも「教育支援」のための施策です。
そのため、VLPでは基本的には授業が行われるほか、他の生徒と会話したり、先生に相談したりなど、
バーチャルな学校が展開しています。
普段は人とのコミュニケーションが苦手な児童・生徒でも、
バーチャルな空間でなら活発に交流できるケースもあるため、
円滑な人間関係の構築にも寄与するはずです。
VLPを利用しながら、徐々に他者とのコミュニケーションを深められれば、
社会復帰する際に大きなメリットになるでしょう。
メリット2、病気や遠方にいても参加できる
身体に不具合がある方、あるいは東京の遠方にお住まいの方でも、
誰でもが参加できるのがVLPのメリットです。
またVLP内ではアバターが自分の分身として活動してくれるため、
児童・生徒さんが参加できる範囲で授業を受けられます。
これまで、心身の不調や住む場所により、教育を受ける機会が限られるケースもありました。
しかしVLPを活用することで、さらに教育支援が拡充することが期待されます。
これを受けて、VLPの利用者からは次のような声が上がっています。
・「教育支援センターへ登室できない児童生徒が、定期的なVLPの利用を通して心理的に安定。センターへの登室を再開できた」(新宿区)
・オンライン学習教材を活用。学習の実績をログで確認し、出席の取り扱いを判断できた」(墨田区)
引用:教育新聞|不登校支援3Dメタバース「VLP」 都内の半数近い自治体に拡大
メリット3、学習状況を記録できる
メタバース内で授業を受けているとはいえ、
自分の学習内容がどの程度進んでいるのか気になるはずです。
しかしこの点も問題ありません。
メタバース教育であるVLPでは、学習内容が記録に残るため、
いつでも、どこでも自分の学習内容を確認することが可能です。
よく理解できていない内容であれば、何度でも復習し、
その都度、理解度を深められます。
デメリット1、学校と同程度の学習量にならないことも
VLPでは、児童・生徒さんの状況に合わせて参加することができます。
一方、メタバース空間内で実際の学校と同じ量の学習ができるかというと、
困難な面は否めません。
VLPの活用は、教育支援をさらに加速させるものではあるものの、
残念ながら教育の全てを代替できるものではありません。
デメリット2、現実とはやはり異なる
アバターを通じて他の人とコミュニケーションをとれますが、
やはり「現実と同等」にはなりません。
そこにはどうしても、リアルな人との違いは出てきてしまいます。
しかし、コミュニケーションの取り方や人との接し方を知ることは、
たとえバーチャルな空間であっても大切なことです。
VLP内で少しずつ他者と接しながら、社会復帰や社会活動を目指してみましょう。
家から出られない子どもが出られるようになるだけでも、十分な変化です。
VLPまとめ
今回は東京都が実施するメタバース教育、VLP(バーチャル・ラーニング・プラットフォーム)を紹介しました。
東京都という限定された教育支援ではあるものの、
今後は他の地方自治体においても、同様の施策が行われることが予想されます。
みなさんがお住まいの自治体でも、同じような試みを実施している地域もあるかもしれません。
メタバース教育に少しでも関心がある方は、
お住まいの都道府県のウェブサイトで確認してみてはいかがでしょうか。
最後に関連記事のリンクを改めて紹介します。
・GIGAスクール構想についてはコチラ
・NEXTGIGA構想についてはコチラ
・メタバース教育についてはコチラ
・適応指導教室はコチラ
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