教育メタバースとは?メリットやデメリットは?活用事例も含めてわかりやすく解説します!
この記事では、近年教育現場で注目を集めている教育メタバースについて解説します。
GIGAスクール構想やNEXTGIGAスクール構想が進められている現在、ICTを活用した教育改革が急ピッチで進められています。
そのような時代のなか、新たな教育支援として登場したのが、インターネット上での仮想空間を応用した教育メタバースです。
文部科学省の報告によれば、令和4年度の小・中学校の不登校生徒数は299,048人と、およそ30万人にまで達することが報告されました※。
※文部科学省|令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(令和5年10月4日発出)p20
教育機会の均等性という観点から、こうした事態は看過できない重要な問題であると考えられます。
そこで今回は、不登校支援の新たな試みである、教育メタバースについてわかりやすく解説します。
教育メタバースとは

「そもそも教育メタバースって何?」
「メタバースそのものを初めて聞いた」
という方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、メタバースについて解説します。
そもそもメタバースって何?
メタバースとは「超える・超越」を意味する「meta(メタ)」と、「宇宙・世界」を意味する「universe(ユニバース)」を合わせて作られた造語です。
この概念が初めて登場したのは、アメリカのSF作家ニール・スティーブンソンが1992年に出版した小説『スノウ・クラッシュ』からだと言われています。
SF世界におけるフィクションが、テクノロジーの進歩に伴い現実化したわけですね。
メタバースとは簡単に言うと、「インターネット上に作られた仮想の3次元空間」のことです。
ユーザーは「アバター」と呼ばれる自分の分身を通して、仮想の3次元空間でさまざまな体験を自由に行うことができます。
映画「アバター」やゲーム「どうぶつの森」などのイメージに近いかもしれません。
近年ではゲームやSNSなどの分野において目覚ましい発展をとげていますが、その他にも、イベントやスポーツ、ショッピングなど応用範囲は多岐にわたります。
メタバースの技術を教育の分野へ
メタバースの技術を教育支援に活かす試みとして登場したのが、教育メタバースです。
上述のように、日本における不登校児童・生徒の数は年々増加傾向にあります。
これは教育機会の観点から見ても著しい損失に繋がるだけでなく、将来的な雇用や社会の一員としてのアイデンティティの形成に、大きな影響を及ぼす恐れが懸念されています。
そうした時代背景のなかで、仮想空間内に学校を作り、登校したり授業を受けたりすることで(メタバース登校)、教育の機会を確保することが教育メタバースの目的です。
仮想空間内では教室や職員室はもちろん、教師や補助スタッフも滞在しているため、学校に通いたくても通えない児童・生徒にとっての居場所づくりや、学習機会の確保が期待されています。
現時点では教育メタバースを実施している自治体は限られているものの、メタバース登校を実際の出席として扱う学校も出てきました。
教育メタバースの活用事例
メタバースを教育分野で活用する事例は、主に海外で浸透しています。
たとえば、アメリカ・スタンフォード大学では、多くの授業でVRを使用した講義を行っているそうです。
授業では、仮想空間内にそれぞれのアバターが参加し、議論や実習を行なっていると言われています※。
※TOPPANBiZ|メタバースの教育現場での活用方法とは?バーチャル空間が変える教育の未来
さらに今後は、知的障害のある学生に対して感情や行動の実践トレーニングを目的とした、教育プログラムも実装される見込みです。
一方、日本における試みはどうでしょうか。
残念ながら現段階においては、教育メタバースを実施している自治体・学校は少ないようです。
しかし2023年、京都府によるメタバース不登校学生居場所支援プログラム「ぶいきゃん京都」
※が実施されたことから、日本においても今後の拡大が期待されます。
※京都府|メタバース不登校学生居場所支援プログラム「ぶいきゃん京都」
また埼玉県戸田市や東京都文京区でも、メタバース空間を利用した教育支援が実施されています。
↓リンクは以下から
広報戸田市2022年9月号|「戸田型オルタナティブ・プラン」を推進しています!
東京都文京区|児童・生徒の保護者の方へ、不安や困りごと、ありませんか?(ページ下部)
東京都小金井市の試験的な取り組み
東京都小金井市では2022年12月5日から2023年1月30日にかけて、不登校の小中学生を対象とした、バーチャル空間を用いた試験的な取り組みが実施されました。
同プロジェクトでは、カウンセラーによる「プチ悩み相談」が併設され、開校日は月・火・木・金の週4日間。
プログラミング部やイラスト部といった、メタバースならではの部活動も実施され、1日あたり1コマ以上の特別授業の参加で「出席扱い」にも対応していたとのことです。
教育メタバースのメリット・デメリットは?

次世代の教育支援として期待される教育メタバース。
この広がりは、教育現場にどのような変化をもたらすのでしょうか。
以下では現時点で考えられる、メリット・デメリットを簡単に紹介します。
メリット1、web上で登校できる
教育メタバースで期待されるメリットとして、web上で登校できることが挙げられます。
メタバース登校を利用することで、さまざまな理由※により学校に通えない児童・生徒も、自宅から外出することなく登校が可能です。
今後、教育メタバースの取り組みが普及すれば、オンラインでの登校も出席として認められるケースが増えていくことが予想されます。
そのため、教育を受ける機会が増え、取りこぼしのない教育の後押しとなることでしょう。
※文部科学省|不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書(令和3年10月発出)
メリット2、社会的繋がりをもつキッカケとなる
社会的な問題の1つに「ひきこもり」があります。
ひきこもりについても原因は多岐にわたるものの、社会との接点が著しく低下することは否定できません。
しかし教育メタバースを利用することで、児童・生徒が社会との繋がりをもつキッカケとなり、他者とのコミュニケーションを通じて、人付き合いや人間関係について学ぶ経験を得られます。
メタバース内では、自身の素顔を出さずにアバターでやり取りできるため、実生活よりも他者との積極的な交流が生まれ、趣味や気の合う友人が見つかりやすくなるでしょう。
メリット3、時間や場所の制限から解放される
教育メタバースの実現は、時間や場所の制約を受けない、柔軟な教育の実現に寄与します。
というのも、メタバース空間であれば時間や場所に左右されずコンテンツを学習し、コミュニケーションを図るための居場所が作られるからです。
不登校等で問題を抱える児童・生徒の中には、昼夜逆転といった不規則な生活を送っているケースも少なくありません。
メタバース空間であれば、そういった子どもにも負担の少ない支援が期待できます。
メリット4、学習効率の向上
これまでの教科書をベースにした授業とは異なり、3Dコンテンツなどを利用した立体的な授業が可能となります。
たとえば動植物について学習する際にも、映像を用いることで、鮮明で詳細な解説が可能です。
さらにアニメーションを用いた学習教材を活用することで、児童・生徒の興味を惹きつけ、より学習効率の高い授業が展開できるでしょう。
GIGAスクール構想の理念と同様、生徒一人ひとりの関心や理解度に沿った教育を提供できます。
GIGAスクール構想についてはこちら。
教育メタバースのデメリット1、社会的な浸透不足
さまざまなメリットが期待される教育メタバース。
その一方で、現段階におけるデメリットも指摘されています。
デメリットとしてもっとも挙げられるのが、社会的な浸透不足、あるいは理解が追いついてない点があるでしょう。
ゲームやビジネスの分野においては着々と浸透しているメタバースですが、それでもメタバースに対する一般的な認知度は高いとは言えません。
ましてや、教育分野におけるメタバース利用については、「聞いたことがない」という方が大多数ではないでしょうか。
しかし上記の事例で示したように、教育支援の一環として教育メタバースに着手する自治体も出始めています。
そのため、いかに社会的認知を増やしつつ、教育支援に有益であるかを広められるかが今後の課題です。
デメリット2、現実でのコミュニケーションが苦手になる可能性
メタバース空間でのコミュニケーションはうまくできても、現実世界でのコミュニケーションが苦手になる人が出てくるかもしれません。
また、メタバースでは瞬時にさまざまな情報が入手できるため、現実世界での対人関係をおっくうに感じる可能性もあります。
一方で、教育メタバースはあくまでも教育支援として行われるプロジェクトです。
そのため、メタバース内での適切なカウンセリングの他にも、現実での支援を併用することで、こうした問題も次第に解決することが期待されます。
教育メタバースまとめ
教育メタバースについて解説しました。
テクノロジーの進化が著しい昨今、教育現場でも大きな時代の転換期を迎えています。
ICTの普及とともに、この流れはさらに加速することは間違いありません。
今後は教育メタバースも教育支援の1つとして、大きな役割を果たすことが期待されます。
この記事を機会に、お住まいの地域で実施されている教育支援について調べてみても良いかもしれません。
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