学びの多様化学校とは?特徴・入学方法・費用まで徹底解説!

2025-05-10

不登校やその傾向にある児童生徒のための特別な教育を行う、学びの多様化学校。

2025年(令和7年)2月現在、全国に35校が設置され、今後さらなる拡大が期待されています。
この記事では、学びの多様化学校の特徴から入学方法、費用まで詳しく解説しますので、
ご参考いただければ幸いです。

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学びの多様化学校とは

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制度の概要

学びの多様化学校は、不登校児童生徒に配慮した特別の教育課程を実施する学校です。
「学校教育法施行規則」第56条※を基に学校を指定し、文部科学大臣の指定により実装が可能です。

2023年(令和5年)8月までは「不登校特例校」と呼ばれていましたが、児童生徒の視点に立った名称への見直しにより、現在の名称となりました。

「学びの多様化学校」では、通常の教育課程とは異なり、生徒・児童の学習ペースに配慮した教育課程を実施しつつ、学び直しや学習の補強、基礎学力の向上を目的としています。

※e-GOV法令検索|学校教育法施行規則 第56条

学びの多様化学校:現在の設置状況

この取り組みについて初めて耳にしたという方も多いかもしれません。
しかし、2025年2月の段階で35校設置されており、それぞれの内訳は以下の通りです。

設置校の内訳

・小学校5校

・中学校21校

・小中一貫校3校※

・高等学校6校

※このうち、北方町立北学園特例教室「オンリー1」については、8・9学年(中学2・3学年に相当)生徒対象。

また、政府は2027年までに全国都道府県への拡大も視野に入れており、最終的には300校の設置を計画しています。

なお、東京都の「チャレンジクラス」は、公立小中学校での学びの多様化学校の一例です。

関連記事👉東京都のチャレンジクラスについてはこちらから。

学びの多様化学校の特徴

では、どのような教育課程が実施されているのでしょうか。
各学校によりプログラムが若干違いますが、標準の取り組みについて見てみましょう。

独自の教育システム

学びの多様化学校の大きな特徴として挙げられるのは、以下の3点です。

  1. 個々のペースを最大限尊重
  2. 個別最適化された学習による基礎学力の保証
  3. 豊富な体験活動の機会提供

少人数制と個別指導

一般の学級では1クラス35人に設定されています。
しかし、学びの多様化学校では一人ひとりの児童・生徒のニーズに合わせるため、少人数で構成されています。

また、生徒数に対して教員の人数も多く配置されており、とりこぼしのない教育が実施されているのも特徴です。

なお、多くの学びの多様化学校では、スクールカウンセラー(通称SC)が在籍しているため、心理的不安や悩みなどを抱える児童・生徒であっても、安心してサポートを受けられます。

教育課程を修了するという目的はもちろん、安心して教育を受けられる「居場所」としても重要な役割を果たしています。

ICTの活用

GIGAスクール構想により、現在ではほぼ全ての児童・生徒がタブレット端末を用いて授業を行っています。

これにより、学びの多様化学校でもタブレット端末を活用し、教室以外の場所やオンラインでの授業参加が可能です。

そのため、登校に不安を抱える児童・生徒であっても気軽に発言し、自身にあった学習や補習を行えます。

また、不登校になった児童・生徒はどうしても社会的コミュニケーションが苦手となる傾向があるようです。
そのため、学びの多様化学校ではソーシャルスキルトレーニング(通称SST)を実施し、ロールプレイや遊びを通じて、対人スキルを築く訓練も実施されています。


関連記事👉GIGAスクール構想
参考|文部科学省|学びの多様化学校 解説資料

学びの多様化学校に入学できる対象者

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ここまで、学びの多様化学校の制作や特徴について紹介しました。
では、どのような児童・生徒が学びの多様化学校の入学対象となるのでしょうか。
以下では、条件や審査について簡単に紹介します。

入学条件

まずは、入学条件を見てみましょう。
主に以下の児童・生徒が対象です。

  • 不登校状態にある児童生徒(年間30日以上の欠席)
  • 不登校傾向が見られる児童生徒

ここにおける不登校とは以下の定義によって規定されています。


「何らかの 心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために、年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者」

引用|文部科学省|不登校の現状に関する認識

なお、一時的に登校できる状態であっても、
断続的に不登校やその傾向が見られる児童・生徒も対象です。

入学審査について

また、入学審査においては以下の2点が重視されています。

  • 入学が適当かどうか
  • 継続的な通学が可能かどうか

これらの基準から、体験入学や面接を通じて審査が実施されます。
現時点で学びの多様化学校を実施している学校一覧については、以下のリンクを参照してください。

参照|文部科学省|学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧

具体的な学校生活

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学びの多様化学校では、どのようなスケジュールが実施されているのでしょうか。
上述したように、実施学校ごとに授業課程が異なりますが、大まかなスケジュールとして、以下のものが挙げられます。

1日のスケジュール

基本的な時間割は以下の通りです:

  • 登校:9時10分まで
  • 授業:1〜6時間目
  • 帰りの会:16時

ただし、児童・生徒ごとにそれぞれ抱える課題は異なるため、全ての時間に参加することを前提としていません。

1日のうち数時間だけ出席する児童・生徒や、オンラインから参加するなど、出席方法はさまざまです。

社会性を育む取り組み

上述したように、学びの多様化学校ではソーシャルスキルトレーニング(SST)を実施し、児童・生徒の個性を育成します。

  • コミュニケーション能力
  • 対人関係スキル
  • 自己理解・他者理解

これらの練習を通じて社会性を身につけ、
自分自身で課題を解決する能力を養います。

なお、どのようなプログラムを実施するかは実施校により異なるため、体験入学や説明会など、事前にしっかりと情報を集めましょう。

学びの多様化学校の費用

次に、学びの多様化学校にかかる費用について見てみましょう。
基本的に公立学校の場合においては授業料は無料ですが、私立学校のケースでは授業料が発生するため、注意が必要です。

公立学校の場合

義務教育段階では無料で授業を受けられます。

私立学校の場合

しかし、私立学校の場合は授業料が発生します。
小学校から高等学校のおおよその授業料の目安※は、小学校で41万2,000円、中学校56万8,400円、高等学校で52万400円です。

そのほか、入学金や教材費、バスや電車を利用する場合は交通費も別途必要となります。
なので、費用面をしっかりと考慮しながら、無理のない範囲で選択することが重要です。

なお、私立学校の場合は、自治体によって独自の支援制度がある場合もあります。
たとえば、東京都の場合、東京都私学財団の私立中学校等授業料軽減助成金事業があります。
また、東京都足立区では、私立の学びの多様化学校の授業料に対する助成を独自に行っています。

※なお、2025年2月時点で、与野党間で私立高校の教育無償化について議論されています。
結論次第で私立高校費用負担が大幅に軽減される可能性があります。

※文部科学省|令和6年2月改訂学びの多様化学校設置に向けて手引きp24(私立の授業料)
東京都|所得制限なく私立中学校等の授業料支援(10万円)が受けられます9月2日からオンラインで申請受付を開始
公益財団法人|東京都私学財団|私立中学校等授業料軽減助成金事業
東京都足立区|私立学びの多様化学校の授業料の一部を助成します

学びの多様化学校終了後の進路について

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卒業資格

学校教育法施行規則に基づいて設置されているため、一般の学校と同様の卒業資格を取得できます。

そのため「学校に通っても将来の進路に繋がらないんじゃないか」という心配はいりません。
ただし、ご自身(あるいは親御さん)が希望する学校の進路実績については、事前にきちんと確認することをおすすめします。

進路指導の特徴

学びの多様化学校でも、児童・生徒の特性に合わせた進路相談が受けられます。

  • 個々の希望や適性に応じた丁寧な進路指導
  • 必ずしも学力向上や大学進学のみを目的としない
  • 多様な進路選択をサポート

学びの多様化学校を選ぶ際の注意点

最後に、学びの多様化学校を選ぶ際のポイントを紹介します。
以下の点に留意し、周囲と相談しながらじっくりと選んでみてください。

学校選びのポイント4つ

  1. 教育方針の確認
  2. 通学のしやすさ
  3. 費用面の検討
  4. 子ども自身の意思確認

見学・体験入学

見学や体験入学は、今後の学校生活を送る上で特に重要です。
気がついたことやわからないこと、不安に思うことがあれば、
遠慮せずに質問してみましょう。

体験入学に行く際のポイントとして以下のことが挙げられます。

  • 実際の学校の雰囲気を確認
  • 授業や生徒の様子を観察
  • 教職員とのコミュニケーション
  • 不安点や疑問点の質問

学びの多様化学校:まとめと今後の展望

  • 2027年までに全都道府県への設置を目指す
  • 将来的には300校程度まで拡大予定

学びの多様化学校は、従来の学校教育にとらわれない、新しい学びの形を提供しています。政府の予定通り、今後300校まで設置されれば、より多くの児童・生徒が学校生活を送ることができるでしょう。

参照|文部科学省|学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧

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