GIGAスクール構想とは?その目的や現状は?メリットや問題点を簡単に解説!

2024-09-09

はてな

インターネットやデバイスの発達により、
現代の教育現場は大きく変化ししつつあります。

かつてのような生徒全員に同じ教育を施す「一律的な教育」から、
一人一人の能力や進捗状況に合わせた教育が主流となり、
子供達をとりまく環境も大きく変化してきました。

そのような現状を踏まえた上で、2019年から文部科学省が打ち出した政策が、
「GIGAスクール構想」です。

具体的には、児童や生徒全員にコンピュータと高速ネットワークを整備する取り組みで、
令和3年7月の時点で全国の公立小学校の実に96.1%、公立中学校の96.5%において、
端末の利用を開始しています※。

※文部科学省 令和3年8月「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果」

その目的は?

ではその目的はどのような点にあるのでしょうか。
もっとも重要な目的は「一人一人の個性や能力に合わせた教育の実現」です。
児童・生徒はそれぞれ生まれながらの能力や指向性が異なります。
そのため、これまでの教育方針ではどうしても周囲に馴染めず、
学習の遅い児童・生徒は置いていかれる傾向がありました。

しかし「GIGAスクール構想」においては、
児童や生徒一人一人の能力や環境、状況に合わせた教材を配信できるため、
学習状況や進み具合にあった、取り残されることのない教育が期待されています。

また、発達障害や学習障害といった何らかの障害を持つお子さんにとっても、
無理強いすることなく、個性を発揮できる教育が可能と言えるでしょう。

さらに現在、小中学校における不登校児は299,048人に上り、
とりわけ令和2年以降、その数は急激な増加傾向にあります※。
こうした不登校児に対する教育機会という意味においても、
「GIGAスクール構想」の役割は大きなものとなっていくでしょう。

※文部科学省令和4年度|児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要p21

教育現場における現状について

2019年の閣議決定後、急ピッチで進められている「GIGAスクール構想」。
現在、全国の公立小中学校では普及が進んでいるものの、
高校においての端末整備の状況は、各自治体や学校ごとに大きく異なるのが現状です。

現段階では文部科学省による標準仕様書モデルが提示されており、
使用端末の選定や、どの機器を利用するかといった活用方法については、
仕様書モデルを参考にしつつ、各自治体に任されていています。

また施策においは、地域ごとに普及スピードが異なるため、
地域格差のない、隅々まで行き届いた整備が早急に求められています。

GIGAスクール構想のメリット

パソコン

IT技術の進歩に伴い、日本の教育現場にも変化が求められています。
ここまで紹介してきた「GIGAスクール構想」にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

メリット1、生徒に合わせた学習プログラムを作れる

GIGAスクール構想では、生徒の能力や個性などに合わせた学習プログラムが提供できます。
これまでの一斉学習では理解できず、取り残されてしまうような課題であっても、苦手な部分や理解不十分な問題を繰り返し復習できるため、きめ細やかな教育の提供が可能となります。

さらに、学習状況もクラウド上に記録されるので、
いつでも自分の理解度を確認することが可能です。

メリット2、プロミング学習への親和性が高まる

メリットの2つ目として、プログラミングに対する親和性が高まることが挙げられます。2020年から小学校でのプログラミング教育が必修となりました。
子供達がパソコン環境に触れる機会が増えるなか「GIGAスクール構想」の拡大により、
学習機会の増加が期待されています。

今後はプログミングに関心を持つ生徒が増えることが予想され、
将来的なIT分野の人材確保にもつながることでしょう。

メリット3、アクティブ・ラーニングの推進

アクティブ・ラーニングとは、生徒本人が達成したいことを主体的に学ぶ参加方法のことです。
これまでの一斉学習では、わかる人が手を挙げるという「挙手性」が重要視されてきました。

しかし、大勢の人の前で発言するのが苦手であったり、間違えることを極端に怖がる生徒がいるという事実も見逃せません。

・「わかっているのに手をあげられない」
・「みんなに笑われるのが怖い」

こうした問題を解決するのにも「GIGAスクール構想」には大きなメリットがあります。
というのも、端末を使用することで手を挙げなくても意見や回答を発信できるため、
たとえ間違っていたとしても、生徒の自主性や自尊心を傷つけずに教育を提供することが可能になります。

メリット4、教員の業務も効率化する

「GIGAスクール構想」は、児童や生徒たちだけでなく、教員にとっても大きなメリットがあります。
これまでの情報共有は、主にUSBデータの共有、あるいは紙媒体での確認で行われてきました。

しかし今後は、生徒の出席状況や成績などのデータを電子的に管理し、クラウド上において教員同士が情報共有できるため、作業時間が短縮されるほか、効果的な学習プロセスを提供しやすくなることが予想されます。

GIGAスクール構想の問題点

ここまでメリットを解説してきました。
しかし、もちろん問題点も存在します。
以下では現在考えられている問題点を簡単に見てみましょう

問題点1、教員のIT知識が急務

大きな問題点として挙げられるのが、教員のIT関連に対するスキルの向上です。
「GIGAスクール構想」では、教員にも一定以上のITリテラシーが必須となります。
それぞれの児童や生徒にとって最適な学びの機会を提供するには、
教員が生徒以上にITを熟知し、端末を使いこなせることが重要です。

小学校からプロミング学習がある以上、
教員もある程度のプログラミングの知識が求められることも予想されます。

問題点2、教育ICT担当者の確保

ICTとは「Information and Communication Technology」を略した言葉です。
情報通信技術を意味し、広くは通信技術を利用したコミュニケーションのことを言います。

「GIGAスクール構想」においてはICT担当者の確保が必須であり、
現在ICT人材の育成が急ピッチで進められている状況です※。

また、教員の側にもICTアドバイザーによる説明会や、
ワークショップへの積極的な参加が求められています。

※総務省|「高度ICT利活用人材育成プログラム開発事業」の概要

問題点3、端末が壊れるケースも少なくない

問題点としてしばしば取り上げられるものに「端末の破損」があげられます。
なかでも破損原因として多く報告されているものは、
授業中に端末を机から落としてしまう「落下」です。
そのほか、屋外で使用した際に入る砂ぼこりや、
ケーブルの損傷なども破損原因として報告されています。

端末導入後1年間はメーカーの保証がつくものの、
2年目以降は各自治体により対応方法が異なるようです。
たとえば2022年、埼玉県久喜市ではタブレット修理費として1000万円以上が投入されています※。

※埼玉新聞|なんと1千万円超…小中学生の授業用タブレット修理代、埼玉・久喜市で想定大幅に上回る 主な破損箇所は

また神奈川県横浜市のように、
使用方法によっては弁済対象とする自治体も見受けられます※。

横浜市教育委員会|GIGA端末とその付属品の破損・故障等の対応についてのお願い

いずれにしても、予算面においてどのように工面していくのかが、
今後の大きな課題と言えるでしょう。

「GIGAスクール構想」のまとめ

今回はGIGAスクール構想について、簡単に紹介しました。
IT技術の進歩とともに、教育現場やその環境は大きな転換点を迎えています。

とくに教育現場を担う教職員にとっては、
ITリテラシーの向上が急務であり、
いち早い変化への対応が求められているのが現状です。

このブログでは、教育関連に関する包括的でわかりやすい内容を心がけて発信しています。
今後も徐々にコンテンツを増やす予定ですので、
ぜひ当ブログを参考に、教育について一緒に考えていきましょう。